フィルムセンターでは、昨年度映画監督としては3人目となる文化勲章を受章し、今年は監督50周年記念作品『東京家族』が公開された山田洋次監督のレトロスペクティブを開催する運びとなりました。
1954年に松竹大船撮影所に入社、1961年に『二階の他人』でデビューした山田監督は、ハナ肇主演の喜劇「馬鹿」シリーズなどに手腕を発揮、1966年の『運が良けりゃ』『なつかしい風来坊』でブルーリボン賞監督賞を受賞して、一躍脚光を浴びます。
1969年に公開された渥美清主演の『男はつらいよ』は絶大な人気を博し、1995年の最終作まで四半世紀にわたり計48作を数える、世界にも類のない大シリーズとなりました。また、これと平行して、現代日本への鋭い批評を投げかけた『家族』(1970年)、『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)、『息子』(1991年)などの重厚なドラマは、キネマ旬報ベストワンをはじめとするその年の映画賞を独占し、日本を代表する映画作家として、山田監督の評価を不動のものとします。
1970年代以降、人材を育成する映画会社の機能が衰退していくなかで、プログラムピクチャーと作家的なチャレンジをまたぐ山田監督の数々の名作が、長年の共同作業で培われた「山田組」スタッフの緊密なアンサンブルから生み出されてきたことも注目に値します。さらに、大船撮影所最後の映画となった『十五才 学校Ⅳ』(2000年)の発表後、京都撮影所で撮影された時代劇『たそがれ清兵衛』(2002年)では旧大映系のベテランスタッフとのコラボレーションを行い、『武士の一分』(2006年)以降は東宝スタジオへと撮影の拠点を移しながら、近年の山田映画は、松竹の伝統の枠をも越えて、日本映画の高度な技術の継承と、新たな映画表現のスタイルを模索しているように見えます。
『東京家族』に続き82本目となる最新作『小さいおうち』の公開を来年1月に控え、今回の特集では、2010年の『京都太秦物語』(阿部勉共同監督)に至る80本の中から、計54本(「男はつらいよ」シリーズは監督自選の20本)を上映して、日本が誇る山田洋次監督の足跡を回顧します。
PDF版でもご覧いただけます →→ 「NFCカレンダー」2013年12月号
★お知らせ
山田洋次監督最新作『小さいおうち』
2014年1月25日よりロードショー!
監督:山田洋次 原作:中島京子
出演:松たか子 黒木華 片岡孝太郎 吉岡秀隆 妻夫木聡 倍賞千恵子
*詳細は公式ホームページをご覧ください。