文化庁が、重要無形文化財に指定された伝統工芸の優れたわざを記録する「伝統工芸記録映画」(現「工芸技術記録映画」)の製作に着手したのは1971年度のこと。これは、旧来の文書や写真等のメディアではとらえにくい工芸技術の工程を映像で克明に記録し、無形文化財の保存と後継者の養成、研究などに役立てることを目的としたもので、以来、ほぼ1年に1本のペースで継続的に製作が行われ、これまでに42本の映画が発表されています。それらの作品は、既に40年にも及ぶ蓄積の中で「記録」としての価値を増しながら、我が国の美術映画、あるいは文化・記録映画の文脈においても貴重かつユニークなシリーズを形成するに至っています。
本特集では、第1作の『蒔絵 -松田権六のわざ-』から、計5作品が作られた昨年度の最新作――『釉裏金彩 -吉田美統のわざ-』『鉄釉陶器 -原清のわざ-』『鋳金 -大澤光民のわざ-』『彫金 -桂盛仁のわざ-』『鍛金 -田口壽恒のわざ-』――まで、全作を美しいオリジナルの35mmフィルムで鑑賞いただける機会となります。
また、同時期に東京国立近代美術館工芸館(北の丸公園)で開催される「所蔵作品展 人間国宝と近代工芸の名品」(11月22日-2012年1月29日)では、上記の映画シリーズと関係する主要な工芸作品約60点を特集します。『蒔絵 -松田権六のわざ-』で記録された後、工芸館へ移管された《蒔絵槇に四十雀模様二段卓》や、『髹漆 -増村益城のわざ-』に登場する《乾漆朱輪花盤》(当館寄託作品)のほか、京都国立近代美術館が所蔵する北村昭斎の螺鈿、文化庁が所蔵する田口壽恒の鍛金や中川清司の木工芸などの作品を陳列します。作品(展示)とその制作工程(映画)を比較しながら、お楽しみ下さい。
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文化庁「工芸技術記録映画」の特集
★関連企画
所蔵作品展 人間国宝と近代工芸の名品
会期:2011年11月22日(火)- 2012年1月29日(日)
*休館日:月曜日(ただし1/2、1/9は開館)、12/28-1/1、1/10
会場:東京国立近代美術館工芸館
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