広大な大地で多種多様な文化を培ってきたヨーロッパ。そこでは、映画大国イタリア、ドイツ、フランスのみならず、日本の観客にとっては未だなじみの浅い国々もまた良質な映画作りをめざして地道に製作を続けてきました。フィルムセンターは、これまでに様々な国の映画を紹介する中、ヨーロッパにおいては15カ国の映画を国別に特集し、各国の諸相をスクリーンに投影してきました。
この度もそうしたヨーロッパ映画の豊かな広がりに着目して、フィルムセンターが所蔵する外国映画作品の中から、北欧、東欧、中欧も含めた欧州9カ国で生み出された23作品(無声映画8本、トーキー映画15本)を紹介する「ヨーロッパ映画名作選」を開催します。本企画は、知名度の高い名作に加え、1910年代のデンマークの無声映画、チェコのトーキー初期作品、さらには1950年代のハンガリー映画を含むヴァラエティに富んだ上映プログラム構成となっています。世界映画史に名を刻む古典的ヨーロッパ映画の世界をご堪能ください。
なお、12月4日から9日まで(プログラム1~6)は、無声映画をピアノの生伴奏つきで上映します。その都度つむぎ出されるメロディは、作品の新たな魅力を引き出してくれることでしょう。皆様のご来場をお待ち申し上げます。
ピアノ伴奏者紹介(50音順)
天池穂高(あまいけ・ほだか)
東京芸術大学音楽学部作曲科卒、同大学院修了。第15回現音作曲新人賞入賞。作品はソロからオーケストラまで幅広く、また邦楽器のためにも作曲を行っている。代表作は松尾葉子の初演指揮による「流動模様~オーケストラのための」、「透明架け橋~能管とオーケストラのための」など。バレエのレッスン・ピアニストとしても活動している。フィルムセンターでは、これまでに「小津安二郎の藝術」や「生誕百年の監督たち」などで演奏を披露した。
小林弘人(こばやし・ひろと)
東京芸術大学音楽学部作曲科卒、同大学院修了。管弦楽、舞台音楽などの委嘱作曲・編曲を手がける。1998年東京国際室内楽作曲コンクール第3位、同年より電子音楽の研究を開始。また自作をはじめソロ、室内楽からジャズ、オペラまで幅広いジャンルの演奏活動を続ける。フィルムセンターでは、「D・W・グリフィス選集」や「小津安二郎の藝術」などで即興演奏を披露。東京芸術大学、東京音楽大学非常勤講師。
柳下美恵(やなした・みえ)
無声映画伴奏者。欧米スタイルのピアノ伴奏で見せるサイレント映画上映会で活躍中。武蔵野音楽大学器楽科(ピアノ専攻)卒業。1995年、朝日新聞社主催の映画生誕100年記念上映会でデビュー以来、フィルムセンターの数々の企画で演奏を披露。国内外の映画祭で公演し、手掛けた作品は300を越える。2006年度日本映画ペンクラブ奨励賞受賞。紀伊国屋書店クリティカル・エディション・シリーズ『裁かるるジャンヌ』『魔女』の音楽を担当。