映画は、様々なメディアに移し替えることが可能な複製芸術でありながら、常に具体的な物質と不可分に結びついた1本1本のフィルムでもあります。そして、映画の歴史は技術や規格の変遷でもある以上、フィルム・アーカイブの活動は、映画のコンテンツ(内容)のみならずキャリア(フィルムそのもの)やコンテクスト(周辺資料等)を保存することにも向けられています。
本上映会は、フィルムセンターがこれまでに収集した外国映画の中から、日本公開当時に用いられたオリジナルのプリントを選び紹介するもので、とくに今回は、1950年代から1970年代にかけて上映されたテクニカラー・プリントを紹介する運びとなりました。三色に分解された(3本の)白黒のネガからポジフィルムを複製し、三色の染料を順に転染するテクニカラー・インビビション(IB/捺染方式)プロセスは、1930年代以降全盛を迎え、多層式カラー・ポジを用いたイーストマンカラーが台頭する1950年代まで“総天然色映画”の代名詞として一時代を画し、彩度が高い独特の色調で観客を魅了しましたが、その後も1970年代前半までは、多くの作品がテクニカラー・プロセスを用いたプリントで公開されていました。また、多層式カラー・フィルムのように経年による著しい褪色が見られないのもテクニカラー・プリントの特徴と言われています。それらの中から16本を連続上映する本特集は、既にテクニカラーIBプロセスが消滅して久しい今日、リバイバル用に作られたニュー・プリントでは再現することのできない作品の本来の姿を知るための貴重な機会ともなるでしょう。
皆様のご来場をお待ち申し上げます。
*本特集で上映するプリントには 傷や汚れのついたものも含まれています。あらかじめご了承下さい。
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