実験映画の系譜:荻野茂二から松本俊夫へ
(計90分)
戦前は国内外の小型映画コンクールで次々と入賞し、戦後はオギノ8ミリ教室を主宰してアマチュア映画の普及に努めた個人映画作家のパイオニア・荻野茂二(1899-1991)の諸作品と、2005年に発掘されて話題となった『銀輪』(矢部正男、松本俊夫、樋口源一郎監督、1955年)のデジタル復元版を上映。荻野作品は、1990年代前半に御子息から寄贈されたフィルム群から、これまで7本を35mmプリントにブローアップして復元してきたが、今回は新たに5本を復元した。上野松坂屋の広報映画『母を迎へて』、ドイツの“都市映画”『伯林 大都会交響楽』(W・ルットマン監督、1927年)の影響が垣間見える『街』、水の流れを抽象映画として表現した『RIVER』、「文化映画」的要素の強い『寒天』(原版は16mm)、そして戦前からの“水”のテーマに連なる『水の幻想』(原版はスーパー8)である(特記以外は9.5mmからのブローアップ)。
母を迎へて
(16分・16fps・35mm・白黒・無声)
'31(監)荻野茂二
?/三角のリズム/トランプの爭
(4分・16fps・35mm・白黒・無声)
'32(監)荻野茂二
RIVER
(6分・16fps・35mm・白黒・無声)
'33(監)荻野茂二
PROPAGATE(開花)
(4分・16fps・35mm・白黒・無声)
'35(監)荻野茂二
AN EXPRESSION(表現)
(3分・30fps・35mm・彩色・無声)
'35(監)荻野茂二
RHYTHM
(2分・16fps・35mm・白黒・無声)
'35(監)荻野茂二
銀輪[デジタル復元版・アナログ三色合成版]
BICYCLE IN DREAM
(12分・35mm・カラー)
日本自転車工業会の海外PR用短篇。少年の自転車へのあこがれを幻想的な表現で映画化した一種のシネポエムで、日本の実験映画史においても伝説的な作品とされていたが、2005年にオリジナル・ネガが発見された。今回は新たに、松本俊夫監督の監修のもとでデジタル復元を実現するとともに、三色分解した白黒ネガを光学的に合成した版を上映する(復元:IMAGICA、IMAGICAウェスト)。
'55(新理研映画)(監)(脚)松本俊夫(監)矢部正男、樋口源一郎(脚)北代省三、山口勝弘 (撮)荒木秀三郎(特殊撮影)円谷英二(美)北代省三、山口勝弘(音)武満徹、鈴木博義
5月23日(日)4:00pmの回は上映後に松本俊夫氏(『銀輪』監督)を招いてのトーク・イベント(約20分)があります。
■(監)=監督・演出 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色 (構)=構成 (撮)=撮影 (美)=美術・舞台装置 (編)=編集 (音)=音楽 (出)=出演 (解)=解説・ナレーション
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