過去の上映
- 2016.7.12-9.4
- 上映企画
生誕100年 映画監督 加藤泰
Tai Kato Retrospective at His Centenary
※平成28年7月6日から9月10日までの予定で隣接の建物において地下解体工事が行われます。これに伴い、午前11:00~午後5:00までの間、当館内でも工事の大きな音や振動の影響を受けることがございます。当館として工事会社との調整を継続しておりますが、皆様には、上映中に工事の音や振動が発生することをご理解くださいますようお願い申し上げます。
会期:2016年7月12日(火)-9月4日(日)
会場:大ホール
★各回の開映後の入場はできません。
定員:310名(各回入替制)
料金:一般520円/高校・大学生・シニア310円/小・中学生100円/障害者(付添者は原則1名まで)、キャンパスメンバーズは無料
発券:2階受付
・観覧券は当日・当該回のみ有効です。
・発券・開場は開映の30分前から行い、定員に達し次第締切ります。
・学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの方は、証明できるものをご提示ください。
・発券は各回1名につき1枚のみです。
★7-8月の休館日:月曜日
概要
PDF版でもご覧いただけます ↓
今年生誕100年を迎える加藤泰(1916-1985、本名・加藤泰通)は、社会から外れた男や女が情熱をぶつけ、権威に反抗し、愛を貫く姿を、大胆な視覚的演出や鋭いアクション描写を通して描き続けた映画監督です。1916年に神戸に生まれ、少年時代に伊藤大輔作品を始めとする無声時代劇映画に夢中になった加藤は、叔父である山中貞雄のつてを頼り、1937年に東宝砧撮影所に助監督として入社します。東宝では脚本家の八木保太郎の影響を受け、その八木の仲介によって1941年、理研科学映画に新人監督として呼ばれ、短篇文化映画の監督としてデビューします。その後1944年、再び八木の協力によって満洲映画協会に移り、同様に文化映画を撮ったのち満洲で敗戦を迎えます。
1946年に帰国した加藤は、翌47年、再び助監督として大映京都撮影所に入社し、伊藤大輔の『王将』(1948年)や黒澤明の『羅生門』(1950年)などに付きますが、1950年9月、レッドパージによって解雇されてしまいます。折しも京都に設立された宝プロダクションから助監督として声がかかり入社、ほどなくして監督に昇進し、『剣難女難』二部作(1951年)で念願の長篇劇映画デビューを飾ります。また、監督業と並行して脚本家としても一本立ちし、東映時代劇作品などのシナリオを数多く執筆します。さらに1956年、東映京都撮影所から四たび助監督として招かれ、チャンバラ映画を作るため入社を決断、一年間助監督を務めた後、1957年に『恋染め浪人』で監督に復帰します。以後、同撮影所を中心に時代劇映画を作り続け、ロー・ポジションや長廻し、ワイドスクリーンを重層的に活用した画面設計などの特徴的なスタイルを確立させていきます。
撮影所システムそして時代劇映画の衰退が明らかになった1960年代後半以降、加藤は他社の仕事も受けるようになり、扱うジャンルも現代劇や文芸大作、犯罪映画など多様化していきます。人物のパッションがほとばしり、力強いアクションが炸裂するその作風は、ますますラディカルさを増し、とりわけ同時期に撮影した2本の映画『炎のごとく』(1981年)と『ざ・鬼太鼓座』(1982年完成・1994年公開)は、その若々しさで観る者を圧倒しますが、結果としてこの2本が、加藤が最後に撮った映画となりました。加藤は生涯で4本の短篇映画と42本の長篇映画、1本のテレビ作品を監督として残しました。それらは今もなお輝き続け、われわれを魅了します。
本特集上映は、加藤の監督作品計44本(短篇2本・長篇41本・テレビ1本)を42プログラムに組んだ大回顧特集となります。画面いっぱいに訴えかけてくる加藤泰作品の魅力を、フィルムセンターの大スクリーンでぜひお楽しみください。
■(監)=監督・演出 (原)=原作 (脚)=脚本・脚色 (撮)=撮影 (美)=美術・舞台装置 (音)=音楽 (出)=出演 (解)=解説・ナレーション
■スタッフ、キャストの人名は原則として公開当時の表記を記載しています。
■特集には不完全なプリントが含まれていることがあります。
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。
上映作品詳細
1剣難女難 第一部 女心流転の巻/潛水艦/羅生門[予告篇]
- 2016年8月9日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月17日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年9月4日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
潛水艦(18分・35mm・白黒)
加藤が初めて監督した作品だが、映画法下で監督として登録されていなかったため、クレジット上では西尾佳雄が演出となっている。海軍省後援による宣伝映画。劣化の激しかった既所蔵16mmプリントから復元した35mmプリントによる上映。
羅生門[予告篇](2分・35mm・白黒)
製作時ファースト助監督だった加藤が作ったとされる予告篇。本篇にないショットが追加撮影された。神戸映画資料館所蔵35mmプリントからの複製。冒頭が欠落している。
剣難女難 第一部 女心流転の巻(70分・35mm・白黒)
加藤の長篇デビュー作。加藤が少年時代に夢中になった、伊藤大輔ら無声期の時代劇の爆発的なアクション描写がふんだんに盛り込まれた快作。原作は、戦前に発行された国民的大衆雑誌『キング』に連載された吉川英治の出世作で、臆病な青年武士が死地から生還して成長する教養小説。第一部・第二部共に神戸映画資料館所蔵16mmプリントからブローアップして作製したニュープリントによる上映。
2剣難女難 第二部 剣光流星の巻(71分・35mm・白黒)
- 2016年8月9日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月18日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年9月4日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
第一部で光子の方(市川)の元に身を寄せた新九郎(黒川)は、家名を取り戻すため修業を積み、剣豪・鐘巻自斎(阿部)との御前試合に臨む…。常に傍観者的でヨーヨーを離さない浪人・村井(尾上)など、脇役の描き分けも楽しい。
3清水港は鬼より怖い(79分・35mm・白黒)
- 2016年8月10日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月16日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年9月3日4:30 PM@長瀬記念ホール OZU
二代目広澤虎造や二代目桂春團治、歌手の美ち奴ら多彩な芸人を迎えて撮った歌謡喜劇映画。「次郎長もの」のパロディながら、恋人のお澄(林)が危機を知らせに街道を疾駆するなど、後年の加藤映画の、強い意志を持った女性像に通じる描写が見られる。現存プリント上のメイン・タイトルは『虎造の清水港』。35mm可燃性オリジナルネガを基に作製したフィルムセンター所蔵35mmプリントと、神戸映画資料館所蔵16mmプリントを照合して作製した、現存する最長版での上映。
4ひよどり草紙(86分・35mm・白黒)
- 2016年7月12日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年7月30日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
『剣難女難』二部作と同様に、吉川英治の小説(『少女倶楽部』で連載)を映画化したチャンバラ活劇。徳川家康が埋蔵した軍用金への鍵を持つ「紅ひよどり」を取り戻そうと、耀之助(江見)と早苗(星)が探索の旅に出る。耀之助を誘惑する敵方の女・お照(朝雲)の屈折した愛情が印象深い。現存プリント上のメイン・タイトルは『隠密秘宝帖』。
*現存プリントは、終盤の8巻目の音声が欠落しています(約12分)。
6逆襲大蛇丸 (70分・35mm・白黒)
- 2016年7月13日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年7月29日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
『忍術児雷也』の続篇。児雷也(大谷)が大蛇丸(田崎)と再び対決する。新たに女賊・朝雲(朝雲)が登場、劇中で歌舞を披露し、児雷也を誘惑するなど物語を楽しくかき回す。的確な劇伴で映画を盛り上げる高橋半は戦前から時代劇映画の音楽を中心に活躍した作曲家で、1950~60年代の加藤作品を支え続けた。
5忍術児雷也(80分・35mm・白黒)
- 2016年7月13日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年7月28日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
新東宝の特撮忍術映画。加藤と萩原遼の共同監督名義だが、加藤はほとんど一人で撮ったと回想している。蝦蟇・大蛇・蛞蝓が入り乱れる妖術合戦が見もの。七代目大谷友右衛門(四代目中村雀右衛門)がお家再興のため立ち上がる侍・児雷也役で大活躍し、腰元に扮して踊りも披露する。白塗りの若侍・弓之助役は本作で映画デビューした若山富三郎。
7恋染め浪人(84分・35mm・白黒)
- 2016年8月10日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月23日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
『逆襲大蛇丸』の後、東映から助監督として声がかかった加藤は、決意して入社。一年間佐々木康の助監督として付いた後、本作で再び監督として復帰する。屈託のない浪人・鮎太郎(大友)が悪人たちを一掃する典型的な東映時代劇だが、鮎太郎を深く想い続ける旅芸人一座の座長(花柳)の描写は突出している。
8源氏九郎颯爽記 濡れ髪二刀流(87分・35mm・白黒)
- 2016年7月14日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年7月31日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
義経の財宝のありかが記されている「火焔」「水煙」2本の宝刀をめぐって、美剣士・源氏九郎(中村錦之助)が様々な敵と戦う。スタンダード用レンズを使って撮った画面の上下を切り、焼き付けの時に引き伸ばす「スーパースコープ方式(画面比2:1)」による第1作で、加藤最初のワイドスクリーン作品。
9緋ざくら大名(82分・35mm・白黒)
- 2016年8月11日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月23日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
山手樹一郎原作の人情喜劇を、加藤が(斉木祝の別名義で)自ら脚色。加藤のフィルモグラフィーの中でも、最も東映の明朗時代劇路線に沿った作品であり、初めて組んだ大川橋蔵の持ち味を生かし、その軽妙な台詞回しや流麗な立ち廻りを存分に見せている。
10源氏九郎颯爽記 白狐二刀流(87分・35mm・カラー)
- 2016年7月14日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年7月31日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
加藤最初のカラー作品で『源氏九郎颯爽記 濡れ髪二刀流』の続篇。勤皇派と佐幕派が集う幕末の大阪が舞台だが、加藤は人物達の収入や暮らし、喜怒哀楽を掘り下げた結果、従来の東映時代劇のパターンから外れた「不真面目きわまる」映画を作ったとして、会社から怒られたという。本作から、フレームの手前/奥や左右の空間を活用した、ワイドスクリーンならではの加藤演出が顕著になる。
11風と女と旅鴉(90分・35mm・白黒)
- 2016年8月11日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月17日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月30日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
加藤が自らの作風を確立させた代表作。加藤が愛する「まともな世間から弾き出された奴。卑怯な奴。ずるい奴。そのくせ何処か底の抜けた気の良い奴。」が、化粧をせずに素顔をさらし、同時録音で周囲の音と混じりながら言葉を発し、ロー・ポジションのキャメラで活き活きと写し出される。物語の下敷きとなったのはニコラス・レイ監督の『追われる男』(1955年)。東映所蔵35mmマスターポジから作製したニュープリントによる上映。
12浪人八景(95分・35mm・カラー)
- 2016年7月12日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月6日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
侍に追われた武家娘(長谷川)に偽りの夫を演じるよう頼まれた浪人(市川)が、追手側にいる昔愛した姫(雪代)と再会し、その危機を救う。佐々木康の体調不良により、加藤に監督のお鉢が回ってきたが、加藤自身も結核を患いながら演出に当たった。東映入りたての助監督時代に右太衛門映画の脚本を担当していた加藤が、監督として右太衛門を撮った唯一の作品である。
13紅顔の密使(89分・35mm・カラー)
- 2016年7月15日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月2日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
結核から再起した加藤が、自身の脚色によって1年ぶりに撮った冒険活劇。平安初期、朝廷の密使・武麿(大川)が、反乱軍の一味に行く手を阻まれながら、陸奥・胆沢城へと向かう。琵琶湖西岸の饗庭野台地に城のオープン・セットが建てられ、撮影所スタッフを総動員して撮影が行われた。
14大江戸の俠児(87分・35mm・白黒)
- 2016年7月16日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年7月29日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月25日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
原作は山上伊太郎が『時代の驕児』(1932、稲垣浩監督)のために書いたシナリオ。香川京子が二役を演じ、鼠小僧役の橋蔵も複数の顔を見せる。加藤作品を特徴づける、前景で人物がのたうつ画面が目立ち始め、クライマックスの乱闘では群衆演出が冴えわたる。抒情的な雪景色も美しい。吉五郎役の住田知仁はのちの風間杜夫。
15あやめ笠 喧嘩街道(71分・35mm・白黒)
- 2016年7月15日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月3日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
加藤が第二東映で撮った股旅映画。第二東映に移籍して時代劇の主演俳優となった品川隆二が、名を上げようと意気盛んな旅鴉・雁太郎に扮し、共に父親を殺された二人の娘(青山、花園)を助けるため奔走する。戦前の松竹蒲田喜劇を支えた渡辺篤が、とぼけた道中師・弥吉に扮して味わい深い。
16炎の城(99分・35mm・カラー)
- 2016年7月16日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月2日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
戦国時代を舞台にした「ハムレット」の翻案。八住脚本の結末に納得できないまま撮り上げた加藤は、この作品を失敗作と評していたが、感情の変遷をとらえる長廻しと流麗なキャメラ移動を交えた正統派の演出は、のちの代表作群にも負けない激情をほとばしらせる。伊福部昭の音楽が悲恋を劇的に彩る。
17朝霧街道(83分・35mm・白黒)
- 2016年7月17日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月3日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
生まれ故郷九十九里浜の村へと戻って来た渡世人・三日月の安(高田)は、網元である黒潮の仁左衛門(坂東)一家の横暴に立ち向かう。一方、仁左衛門の情婦・おぎん(木暮)は安に惹かれていくが…。男女の仲を中心に描いた股旅物で、ラストシーンの静かな美しさが印象的である。
18怪談 お岩の亡霊(94分・35mm・白黒)
- 2016年7月17日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月4日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
鶴屋南北の原作に忠実に(クレジットはなし)、伊右衛門をどこまでも冷酷非道の男とし、照りつける日差しや滴る汗で夏の季節感を表現するなど、加藤流リアリズムが冴えわたる。お岩が鏡の中に変り果てた自分の顔を見る髪漉きの場をワンカットで見せる趣向は、数ある「四谷怪談」の中でも屈指の名場面。加藤が桜町弘子と初めて組んだという意味においても重要な作品である。
19瞼の母(83分・35mm・カラー)
- 2016年7月19日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年7月30日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
中村錦之助の主演予定作が延期となり、急遽代替作品の監督として指名された加藤は、長年温めていた自身の脚色による「瞼の母」を、わずか15日間で撮り上げた。全篇セット撮影、倉田準二によるB班撮影の同時進行そして長廻しの多用という苦肉の策は、股旅映画を代表する作品となって結実した。
20丹下左膳 乾雲坤龍の巻(95分・35mm・白黒)
- 2016年7月19日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月5日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
密命を受け名刀乾雲を盗み出した左膳は傷を負い、長屋の隣人らに世話になるが…。大友柳太朗が丹下左膳を演じたシリーズ最後の作品。松田定次監督による前4作とは異なり、加藤は伊藤大輔が戦前に生み出したニヒルで反抗的な左膳像に回帰し、剣戟より太平の世での武士の悲哀や名刀をめぐる人間模様に焦点を当てている。
21真田風雲録(100分・35mm・カラー)
- 2016年7月20日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月6日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
当時気鋭の劇作家・福田善之の戯曲を、福田本人がシナリオに加わって映画化。猿飛佐助をリーダーとする真田十勇士の大阪冬の陣・夏の陣の戦いを、自在に現代化=パロディ化しつつ、戦国乱世に60年安保体験を重ねて、娯楽性の中にシリアスな方向を垣間見せた異色のインテリ時代劇。
22風の武士(95分・35mm・カラー)
- 2016年7月20日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月25日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2025年1月4日12:00 AM@長瀬記念ホール OZU
熊野の秘境・安羅井の調査を老中から命じられた信蔵(大川)は、素性を幾重にも隠した者たちが入り乱れ、裏切りの渦巻く謀略劇をくぐり抜けていく。司馬遼太郎初期の伝奇ロマンの映画化で、恋愛劇を軸にし、橋蔵の明るい持ち味を生かした隠密冒険活劇。女性登場人物の凛とした強さも印象的。
24幕末残酷物語(100分・35mm・白黒)
- 2016年7月21日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月20日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2025年1月4日12:00 AM@長瀬記念ホール OZU
新選組に入隊したひ弱な若者・江波三郎(大川)が非情な組織の戒律の中で変貌を遂げていくが、実は近藤勇(中村)らに暗殺された芹沢鴨(原田)の甥であることが発覚し…。「残酷時代劇」ブームの渦中で撮られた作品で、橋蔵がイメージの一新を図った意欲作でもある。壬生の新選組屯所とその周辺を、オープン・セットによって正確に再現した。
23車夫遊俠伝 喧嘩辰(99分・35mm・白黒)
- 2016年7月21日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月7日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月24日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
車夫の辰五郎(内田)は真っ正直で自分に嘘がつけない男。惚れた女性(桜町)との結婚を、親分(曽我廼家)への義理立てから取りやめにしてしまうほどである。こんな辰五郎の不器用な生き方が、明治31年の大阪で起こる新旧ヤクザの勢力争いを背景に描かれる。折々の長廻しショットが効果的に登場人物の心情を伝えている。
26沓掛時次郎 遊俠一匹(90分・35mm・カラー)
- 2016年7月22日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月21日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
言わずと知れた名作戯曲の8度目の映画化で、股旅映画の代表作。すでに時代劇映画が衰退した時期に、加藤と中村錦之助が時代劇再興の想いをこめて作った。気のいいやくざ・朝吉(渥美)とやくざ志望の若者・昌太郎(岡崎)は、脚本の鈴木尚之と掛札昌裕による創作だが、この2人の存在が物語をより陰影の深いものにしている。
25明治俠客伝 三代目襲名(90分・35mm・カラー)
- 2016年7月22日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月7日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
木屋辰一家の浅次郎(鶴田)は、競合する星野(大木)やその飼い犬の唐沢(安部)から執拗な嫌がらせを受けるも、辛抱に辛抱を重ねる…。加藤初めての任俠映画だが、多くの登場人物に見せ場を作りながらもラストの破局へと巧みに収斂していく脚本や、撮影・照明・美術などの洗練されたスタッフワークを得て、任俠映画独特の様式美を極めた1本となった。
28男の顔は履歴書(89分・35mm・カラー)
- 2016年8月12日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月20日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月31日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
加藤が松竹大船撮影所に呼ばれ、安藤昇を主演に初めて撮った野心作。戦場体験をもつ医師の主人公の元に急患が運ばれ処置する現在と、昭和23年の闇市での騒動が並行して語られる。加藤は本作で初めて戦後を題材にし、日本人と朝鮮人(劇中での呼称は「三国人」)の憎しみと暴力の連鎖を徹底して描いた。親交がある野村芳太郎と山田洋次の協力を得て撮影され、スタッフの多くも山田組である。
27骨までしやぶる(88分・35mm・白黒)
- 2016年7月23日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月4日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月24日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
お絹(桜町)は3年の年季と聞かされて遊郭に身売りするが、そこは不当な借金で遊女たちを縛り付けていた。足抜けを試みて敗れていく仲間たちの無念を一身に背負うがごとく、お絹は知力と勇気で足抜けへの戦いを挑む。力感あふれる画面と時折のユーモアが凄惨な物語を滑走させ、やがて爽快なクライマックスへと至る。
29阿片台地 地獄部隊突撃せよ(92分・35mm・カラー)
- 2016年8月12日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月21日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年9月1日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
安藤昇のプロダクションであるゴールデンぷろの製作。上官に反抗し、「地獄部隊」に送られた宇留木(安藤)は、中国娘の美雲(潘)と恋に落ち、日本軍の資金源である阿片の撲滅への協力を頼まれる。本筋とは別に群像喜劇の側面も印象的で、カット割りと美術の抽象性も出色。ペギー潘(潘迎紫)はのちもアンジェラ・パン等の名で、台湾や香港で活躍。
30懲役十八年(91分・35mm・カラー)
- 2016年8月13日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年9月2日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
戦場での暴力とその記憶にこだわり続ける“安藤昇三部作”の最後の作品。昭和22年、元海軍大尉の川田(安藤)は元部下の塚田(小池)と共に軍人遺族を支えていたが、銅線を盗もうとして一人捕まってしまう。それから5年、服役中の川田は、塚田が自分や遺族たちを裏切っていることを知る…。
31虱は怖い/剣 縄張
- 2016年7月23日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月5日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
虱は怖い(14分・Blu-ray・白黒・日本語字幕なし)
可怕的虱子
加藤が満映で撮った文化映画。実写部分のさまざまな映画技法や水準の高いアニメーションの駆使によって、興味深い作品になっている。なお、満映時代のもう1本の作品『軍官学校』(1944)は現存が確認されていない。
剣 縄張 (50分・HDCAM・白黒)
加藤が唯一テレビ演出を行った作品。「剣」はのちに「水戸黄門」シリーズなどで知られるC.A.Lが最初に制作した一話完結型のシリーズで、全46話が日本テレビ系列で放映された。第28話の本作では、やくざの幸吉(緒形)と彼を堅気に戻そうとする妻いち(河村)のすれ違いが描かれる。
33緋牡丹博徒 花札勝負(98分・35mm・カラー)
- 2016年7月24日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月31日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
「緋牡丹博徒」シリーズ第3作。名古屋の西之丸一家に草鞋を脱いだお竜(藤)は、自分の名を騙る女が賭場を荒らしていると知る。一方、熱田神宮の勧進賭博を前に、金原一家に不穏な動きが…。因縁の連鎖で次々転がる物語を、冒頭の極端なカットつなぎ、突如始まる西部劇のような追跡シーンなど、大胆な演出満載で一気に見せる。
32みな殺しの霊歌(90分・35mm・白黒)
- 2016年8月13日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月26日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
時効目前の殺人犯(佐藤)がある事件を契機に連続強姦殺人をおこしていくが、純粋な娘(倍賞)に出会い心惹かれ…。衝撃的な殺人場面と、アウトローと山田洋次の協力を得て造形した松竹的ヒロインとの二人の心の交流が、ロー・ポジションの陰影に富んだ白黒映像による緊張感に満ちた語りで描かれる。どんな理由でも人殺しは「罪」かを主題とした作品で、加藤泰最大の問題作と評される。
34緋牡丹博徒 お竜参上(100分・35mm・カラー)
- 2016年7月24日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年9月1日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
『緋牡丹博徒 花札勝負』の後日譚。お竜(藤)はかつて関わった女博徒の遺児(山岸)とその恋人(長谷川)のために母親的な役回りを演じる。お竜が青山(菅原)に蜜柑を手渡す雪の今戸橋の場面は、井川徳道によるセットの様式美と果物を活かした叙情的な演出がかみ合った場面として名高い。
35緋牡丹博徒 お命戴きます(93分・35mm・カラー)
- 2016年8月14日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月18日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年9月2日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
シリーズ第7作。日露戦争直前の上州の村で、農民たちは軍需工場が排出する汚染水に苦しんでいた。結城一家の二代目(鶴田)は、彼らを救おうと尽力していたが…。ワイドスクリーンの横幅と奥行きを最大限に活用する加藤演出は、製作当時の社会問題を取り込んだ物語に、激しい情念を行き渡らせる。
36昭和おんな博徒(91分・35mm・カラー)
- 2016年8月16日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月26日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
大映の「女賭博師」シリーズ(1966-71)に主演していた江波杏子初の東映出演作品。藤純子の引退を受けての企画で、最愛の男(松方)を殺した者たちへの復讐に生きるヒロインの姿が描かれる。空間の奥行きを引き戸の活用で強調するなど、画面構成の妙は本作でも各所に確認できる。
37人生劇場(167分・35mm・カラー)
- 2016年7月26日2:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月27日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
尾崎士郎の同名小説の13度目の映画化。小説家を目指す青年・瓢吉(竹脇)の彷徨を中心に、彼を見守る渡世人の吉良常(田宮)と飛車角(高橋)、宮川(渡)、彼らを取り巻く女たち(倍賞、香山、任田)の生きざまを描く。男女の情愛をしっとりと描き、恋愛映画としても見応えある1本。
*途中休憩あり
38花と龍(168分・35mm・カラー)
- 2016年7月26日6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月28日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
火野葦平の同名小説の映画化。加藤は従来の脚色(東映や日活で幾度か映画化済み)とは異なり、主人公・玉井金五郎(渡)と成長した息子(竹脇)との葛藤を重視し、一人の男の単なる出世物語にとどまらぬ作品に仕上げている。香山、倍賞、太地ら女優陣の力演も見逃せない。
*途中休憩あり
39宮本武蔵(148分・35mm・カラー)
- 2016年7月27日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月27日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
原作は吉川英治の同名小説。関ヶ原の戦いから巌流島の決闘まで、武蔵(高橋)の死闘を中心に描き、彼をめぐるお通(松坂)、朱実(倍賞)、又八(堺)、お杉(任田)、小次郎(田宮)の情念をみせていく。武蔵の修練や成長は省き、悟りは無く死のみ、という世界を描き出す。
*途中休憩あり
41江戸川乱歩の 陰獣(117分・35mm・カラー)
- 2016年7月28日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月28日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
謎の小説家大江春泥から届く一連の脅迫状が、奇怪な連続殺人事件を呼び起こす。大胆でモダンな構図と、香山美子演じるファム・ファタルの妖しい輝き、江戸川乱歩世界の倒錯と退廃の美を表現する美術と音楽が強い印象を残す。長台詞によるクライマックスの謎解きシークエンスの演出は必見。
40日本俠花伝(150分・35mm・カラー)
- 2016年7月27日6:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月19日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年9月3日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
加藤が長年温めたオリジナル脚本を東宝で演出した大作。大正初期、ミネ(真木)は実(村井)と四国から駆け落ちするが、刺客・清次郎(渡)や長田組の親分・金造(曽我廼家)と出会う中で、大きく変貌を遂げていく…。女性の肉体を通してエロスと暴力を骨太に追求した後期加藤映画の集大成。
*途中休憩あり
42炎のごとく(147分・35mm・カラー)
- 2016年8月14日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月19日6:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2016年8月30日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
会津の小鉄こと仙吉(菅原)は、愛する女りん(倍賞)のために、幕末の京都で人生を賭け始める…。全篇通じて飛び交う怒号や叫び声、誇張された表情、無様な斬り合いや噴出する血糊、脈絡のないカットや照明の変化など、演出は一見不自然に、時に稚拙にさえ見える。だが仙吉の、目の前の人間を不幸にはさせないという意志が周囲に伝播していくと共に、映画は異様な美しさを獲得していく。
■作品によって開映時間が異なりますのでご注意ください。
■各回の開映後の入場はできません。