ユネスコ「世界視聴覚遺産の日」 |
![]() Screenings and Lecture
Restoring 'Silver Colour' Process of Kon Ichikawa's Lonely Heart (1981) |
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【会場】 東京国立近代美術館フィルムセンター 大ホール(2階)
【日時】 2009年10月24日(土)
■『幸福』特別上映会…0:00pm-|4:30pm- の2回上映
(各回入替制/開映後の入場はできません)
〈料金〉一般=500円/高校・大学生・シニア=300円/小・中学生=100円/障害者(付添者は原則1名まで)=無料
■講演イベント(無料)…2:00pm-
【定員】310名
【発券】2階受付
11:30am…開場
0:00pm…『幸福』特別上映(105分)
2:00pm…講演イベント(入場無料)
特殊現像プロセス「シルバー・カラー」とその復元
(1時間30分程度を予定しています)
4:00pm…開場
4:30pm…『幸福』特別上映(105分)
※『幸福』特別上映は各回入替制です。0:00pmの特別上映をご覧になった方は、そのまま講演イベントに参加することができます(講演イベントのみの参加もできます)。
・発券・開場は開演の30分前から行い、定員に達し次第締切ります。
・学生、シニア(65歳以上)、障害者の方は、証明できるものをご提示ください。
・発券は1名につき1枚のみです。
・観覧券は当日・当該回のみ有効です。
主催:東京国立近代美術館フィルムセンター
協力:株式会社フォーライフミュージックエンタテイメント、株式会社IMAGICAウェスト、株式会社フジテレビジョン、株式会社崑プロ
後援:日本ユネスコ国内委員会
フィルムセンターでは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が定めた「世界視聴覚遺産の日」(10月27日)を記念するイベント事業を昨年より実施しています。そしてこのたびは、第2回目の特別イベント「『幸福』特別上映会:シルバー・カラーの復元」を開催する運びとなりました。
『幸福』(1981年)は公開当時市川崑監督が久々に現代社会を題材に選び正面から取り組んだ野心作であり、また主役に人気絶頂の水谷豊を起用し、「シルバー・カラー」と呼ばれる特殊現像プロセスを採用した点でも話題を呼びました。今回のイベントでは、フィルムセンターが新たに復元した『幸福』の「シルバー・カラー」プリントの上映と、1981年当時東洋現像所(現・IMAGICA)で本作の仕上げを担当し今回のプリント復元でもフィルムセンターの技術職員として監修を務めている鈴木美康の講演、『幸福』製作当時のスタッフであった手塚昌明氏によるトークなどを通して映画復元の一例を検証します。
本イベントが、文化遺産として歴史資料として映画を保存することの重要性を考える一助となれば幸いです。
※ユネスコ「世界視聴覚遺産の日」についてはこちら
◆お知らせ◆
本講演の採録は、『NFCニューズレター』88号に掲載されています。
『幸福』
1981年、フォーライフ=東宝映画
エド・マクベイン《87分署シリーズ》の「クレアが死んでいる」(Lady! Lady! I Did It)を下敷きに、妻に去られ男手一つで二人の子供を育てる刑事と恋人を殺された同僚の姿を通して現代社会の人間関係を見つめる。当時「金田一耕助」シリーズや山口百恵引退記念映画『古都』など続々とヒット作を生み出していた市川崑監督が自ら企画した作品で、ヒット・ドラマ「熱中時代」の水谷豊が主役の村上刑事に扮し5年ぶりの映画主演を果たしたことも話題となった。ロケーションを多用した本作では、色彩が氾濫する東京の下町のイメージに美的統一感を与えるため「シルバー・カラー」が採用されている。キネマ旬報ベストテン第6位。また今年発表された映画館大賞では特別部門「蘇る名画」(名画館主が2008年に特集上映・リバイバル公開された旧作から選ぶ1本)にも選ばれた。
(105分/35mm/シルバー・カラー)
監督:市川崑
製作:後藤由多加、馬場和夫、黒井和男、小倉斉、坂本敏夫
原作:エド・マクベイン
シナリオ:日高真也、大藪郁子、市川崑
撮影:長谷川清
美術:村木忍
録音:大橋鉄矢
照明:佐藤幸次郎
編集・記録:土屋テル子
音楽:石川鷹彦、岡田徹
配役:
村上…水谷豊
北…永島敏行
野呂…谷啓
庭子…中原理恵
信…永井英里
勉…黒田留以
車崎るい…市原悦子
舟津川良子…草笛光子
中井良作…浜村純
剣持刑事課長…加藤武
千石刑事…常田富士男
小田切刑事…河合信芳
福祉センター職員…小林昭二
女医…新橋耐子
雨宮の奥さん…佐々木すみ江
遠藤の奥さん…三條美紀
吾一…倉崎青児
みどり:川上麻衣子
徳丸館の主人…三谷昇
Based on the work by Ed McBain “Lady, Lady I Did It!”
©2009 The Hui Corporation ©2009 FLME
シルバー・カラー
「銀残し」と呼ばれる特殊現像プロセスの一種。通常のカラー現像ではフィルムの発色後に漂白処理を行い乳剤に含まれる銀化合物を除去するのに対し、「シルバー・カラー」ではこの漂白処理を省くとともに、カラー現像に白黒現像を重ねる「二液現像処理」を行い銀量をコントロールする。カラーと白黒の中間的な色調の効果が生まれるのが特徴で、「シルバー・カラー」の呼称は1981年の『幸福』公開に際し東宝映画が命名した。市川崑監督は1960年の『おとうと』でも銀残しを試みているが(宮川一夫撮影)、それから20年後に製作された『幸福』では、カラー・ポジの性能(発色性)の向上に伴い、銀量のコントロールにもより高度で複雑な技術が要求された。
講師:鈴木美康(すずき・よしやす)
1971年に東洋現像所(現・IMAGICA)に入社。以来30年以上にわたり映画部で「タイミング」(ポジ・フィルムなどの色彩調整)に従事し、黒澤明、木下恵介、小林正樹、市川崑監督の作品を含め400本近い劇場用作品で上映プリントの仕上げを担当する。2007年よりフィルムセンターの技術職員として、新規収集プリントのクオリティ・コントロールなどに従事している。
ゲスト:手塚昌明(てづか・まさあき)
映画監督。西河克己や市川崑の助監督を経て1994年東宝映画に入社。2000年に『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』で監督デビュー。『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)、『戦国自衛隊1549』(2005年)に続き、2008年『空へ─救いの翼 RESCUE WINGS』が公開された。1981年の『幸福』ではサード助監督を務めた。