原作→五味川純平
五味川純平は文壇の外から現われ、文壇の外に多くの読者を持った作家である。この大長篇小説がベストセラーになったのは、一般庶民の間に戦争体験がなおも生き続けていたからに相違ない。彼は敗戦直前にソ連軍と交戦して全滅した部隊の奇跡的な生き残りだった。監督の小林正樹にも長い軍隊経験があり、真正面からこの題材に取り組み、3年がかりで全篇を映画化した。一・二部はヴェネツィア国際映画祭でサン・ジョルジョ賞を受賞。全9時間半の大作は、かつてはオールナイトで一挙上映されたものだが、その頃までは日本人に「戦後」が存在していたことを意味するだろう。