過去の上映

  • 2024.10.8 - 10.20, 11.5 - 11.24
  • 上映企画

没後50年 映画監督 田坂具隆

Tomotaka Tasaka Retrospective

会 期 2024年10月8日(火)-20日(日)、11月5日(火)-24日(日)※会期中の休館日:月曜日

会 場 長瀬記念ホール OZU(2階)

定 員 310名(各回入替制・全席指定席)/各回の開映後の入場はできません。


主 催 国立映画アーカイブ

協 力 午牛会

概要

NFAJプログラムNo.57
↑PDF版でもご覧いただけます。

上映会番号 477

 日本映画の豊かな歴史を眺めた時、田坂具隆ともたか監督(1902-1974)の名を忘れることはできません。1926年に『かぼちゃ騒動記』でデビューを果たした田坂は、やがて『真実一路』(1937)、『路傍の石』(1938)といった子どもを見つめた文芸作品でヒューマニズムに溢れる作風を確立、内田吐夢とともに日活多摩川撮影所の全盛期を築き上げました。また、『五人の斥候兵』(1938)や中国戦線において長期ロケした『土と兵隊』(1939)の成功により、戦争映画に新たな地平を切り拓きました。
 1945年8月、田坂は広島で被曝し数年にわたる闘病を余儀なくされますが、再起後は数々の撮影所で石原裕次郎・中村錦之助・佐久間良子らスターの育成に力を注ぎつつ、『女中ッ子』(1955)、『陽のあたる坂道』(1958)、『ちいさこべ』(1962)、『五番町夕霧樓』(1963)など幾多の名作を残しました。
 こうした輝かしい作品群を誇りながらも、田坂は長らく再評価の機会に恵まれませんでした。しかし小さきもの、弱きものに一貫して寄り添うその作風は、篤実に生きようとする人々へのエールに満ちています。没後半世紀となる本年、1927年の『更生』から1968年の遺作『スクラップ集団』まで、現存するすべての田坂作品を集めるとともに、公私ともに田坂を支えた俳優の瀧花久子をはじめ、助監督時代からの盟友・伊奈精一や内田吐夢、田坂映画に欠かせない俳優・小杉勇や島耕二など、ゆかりの人々の作品も含めて上映します。これらの関連上映により、人とのつながりを大切にした田坂映画のひろがりを感じていただくとともに、田坂や小津安二郎ら戦時下の映画人に影響を与えたドイツ映画を含め、41作品(32プログラム)という大規模な上映でその軌跡を振り返ります。本特集と連動した、田坂の人と仕事に光を当てる当館初の展覧会も開催いたします。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

■(監)=監督・演出 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色 (撮)=撮影 (美)=美術 (音)=音楽 (出)=出演
■外国映画には、すべて日本語字幕が付いています。
■スタッフ、キャスト欄の人名は原則として公開当時の表記を記載しています。
■上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。
NEWとある作品はニュープリントでの上映です。

 

1.更生/愛の町 (計115分) 2.月よりの使者 (147分・1934・入江ぷろ=高田稔プロ=新興キネマ・監:田坂具隆) 3.この父に罪ありや 他 (計90分) 4.五人の斥候兵 (72分・1938・日活多摩川・監:田坂具隆) 5.路傍の石 (130分・1938・日活多摩川・監:田坂具隆) 6.爆音 (84分・1939・日活多摩川・監:田坂具隆) 7.土と兵隊[最長版] (153分・1939・日活多摩川・監:田坂具隆) 8.海軍 (85分・1943・松竹京都・監・脚:田坂具隆) 9.情報局制定 必勝歌/君と僕 (計104分) 10.どぶろくの辰 (94分・1949・大映東京・監:田坂具隆) 11.雪割草 (100分・1951・大映東京・監:田坂具隆) 12.長﨑の歌は忘れじ[短縮版] (118分・1952・大映東京・監・原:田坂具隆) 13.女中ッ子 (142分・1955・日活・監・脚:田坂具隆) 14.乳母車 (109分・1956・日活・監:田坂具隆) 15.今日のいのち (156分・1957・日活・監・脚:田坂具隆) 16.陽のあたる坂道 (209分・1958・日活・監・脚:田坂具隆) 17.若い川の流れ (127分・1959・日活・監・脚:田坂具隆) 18.親鸞 (147分・1960・東映京都・監:田坂具隆) 19.続 親鸞 (127分・1960・東映京都・監:田坂具隆) 20.はだかっ子 (146分・1961・ニュー東映東京・監:田坂具隆) 21.ちいさこべ (170分・1962・東映京都・監・脚:田坂具隆) 22.五番町夕霧樓 (137分・1963・東映東京・監・脚:田坂具隆) 23. (165分・1964・東映京都・監:田坂具隆) 24.冷飯とおさんとちゃん (178分・1965・東映京都・監:田坂具隆) 25.湖の琴 (129分・1966・東映京都・監:田坂具隆) 26.スクラップ集団 (106分・1968・松竹大船・監:田坂具隆) 田坂監督ゆかりの人々とその作品 27.遅咲きの花 他 (計104分) 28.限りなき前進[改篇版] (計87分) 29.母に捧ぐる歌/家なき娘 (計103分) 30.特急三百哩/暢気眼鏡 (計122分) 31.最後の一兵まで (81分・1937・独:ウーファ・監・脚:カール・リッター) 32.誓ひの休暇 (87分・1938・独:ウーファ・監:カール・リッター)

上映作品詳細

1更生/愛の町(計115分)

  • 2024年10月9日(水) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月12日(土) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU

10月12日(土) 1:00 PM ♪伴奏付上映
伴奏:天池穂高

更生(10分・18fps・35mm・無声・白黒・部分)

1927(日活大将軍)(監)田坂具隆(原)南百合子(脚)芦田勝(撮)伊佐山三郎(出)谷幹一、相田澄子、伊藤寿栄子、荒井良平、佐久間妙子

原作は内務省による脚本募集当選作で、現存する最古の田坂作品。恐喝未遂をした八百屋の青年(谷)の更生をテーマとして、都会に暮らす富豪一家と貧困家庭の崩壊と再生を描く。17.5mmで残存していたダイジェスト版を35mmに複製した。

愛の町(105分・18fps・35mm・無声・白黒)

1928(日活太秦)(監)田坂具隆(原)エクトル・マアロウ(脚)山本嘉次郎(撮)伊佐山三郎(美)小山義一(出)夏川靜江、三桝豊、南部章三、吉井康、糸緒千絵子、佐藤円治、見明凡太郎

1977年にベルギー王立シネマテークから収蔵した田坂作品。貧困にあえぐ両親と死別して満洲から帰国した娘(夏川)が、かつて父を勘当した祖父(三桝)の経営する工場で働きながら、頑迷な彼の心を開いていく。田坂が長年苦楽をともにした伊佐山の流麗なキャメラを得て、過酷な労働を強いられる女性たちにも温かい眼差しが注がれている。


2月よりの使者(147分・18fps・35mm・無声・白黒)

  • 2024年10月11日(金) 3:30 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月16日(水) 6:30 PM@長瀬記念ホール OZU

1934(入江ぷろ=高田稔プロ=新興キネマ)(監)田坂具隆(原)久米正雄(脚)木村千疋男(撮)伊佐山三郎(美)水谷浩(出)入江たか子、高田稔、水原玲子、中野かほる、菅井一郎

『瀧の白糸』(1933)が話題となった当時の入江ぷろが久米正雄の同名小説を映画化し、大ヒットを記録したメロドラマ。信州の高原療養所で働く道子(入江)は、患者の弘田(高田)に求婚されるが、他の患者と医師も彼女に想いを寄せていた。全米日系人博物館から寄贈を受けた伴武旧蔵の16mmをもとに、2009年に復元した版での上映。

10月11日(金) 3:30 PM ♪弁士・伴奏付上映
弁士:澤登翠/伴奏:柳下美恵
※10/11の弁士は、澤登翠さんの体調不良により、片岡一郎さんに変更となりました。(10/11 11時50分更新)


この父に罪ありや 他(計90分)

  • 2024年10月8日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月13日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU

この父に罪ありや[『真実一路』改題短縮版](50分・35mm・白黒)

1937(日活多摩川)(監)田坂具隆(原)山本有三(脚)荒牧芳郎(撮)伊佐山三郎(美)松山崇(音)中川栄三(出)小杉勇、片山明彦、花柳小菊、瀧花久子、島耕二、井染四郎、笠原恒彦、津村博

幼い義夫(片山)は父・義平(小杉)と姉・志津子(花柳)と暮らし、母・睦子(瀧花)は亡くなったと聞かされてい た。父が母の所在を隠し通す裏には、志津子の出生に関わる問題が…。田坂が自作で最も愛着を感じていたという『真実一路』2部作の改題短縮版で、主にその前篇「父の巻」(97分)からなる。本作で初出演の片山明彦(島耕二の息子)が素晴らしい演技をみせた。

街の魂(18分・35mm・白黒・部分)

1940(日活多摩川)(監)吉村廉、春原政久(原)長谷川由基(脚)高重屋四郎(撮)大島彦兵衛(美)柴田篤二(音)杉原泰藏(出)星ひかる、井染四郎、滝花久子、風見章子、戸田春子、赤星瞭

NEW

飲んだくれの魚屋の源さん(星)が、車で向かいの店に突っこんだ貧しい運転手・國造(井染)を助ける。まもなく國造に出征の時が…。現存するフィルムは56分中の冒頭18分のみ。高重屋四郎とは田坂のペンネーム。

ぼくらのゆめ(22分・35mm・白黒)

1950(ぎんのすず兒童映画協会)(監)田坂具隆(監・脚)クラタ・フミンド(撮)伊佐山三郎、永塚一榮(音)飯田信夫(出)瀧花久子

生まれ故郷であり被爆地でもある広島を撮った唯一の田坂作品で、広島の学級文庫や移動図書館を紹介した記録映画。GHQ占領下に日本の復興を子どもたちに託すべく作られた。主人公の少年を語り部として子どもたちの表情を活写し、瑞々しい作品に仕上げている。


4五人の斥候兵(72分・35mm・白黒・不完全)

  • 2024年10月11日(金) 7:30 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月7日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1938(日活多摩川)(監)田坂具隆(原)高重屋四郎(脚)荒牧芳郎(撮)伊佐山三郎(美)松山崇(出)小杉勇、見明凡太朗、伊沢一郎、井染四郎、長尾敏之助、星ひかる、井上敏正、渡部清

田坂が小津安二郎の出征する姿と戦地での実話から構想し、原作も手がけた戦争映画。日中戦争のさなか、本隊から敵陣偵察の指令を受けた岡田部隊長(小杉)は、5人の兵士を斥候隊として送り込むが…。兵士たちの相貌と友情を細やかに描き出す田坂の眼差しの温かさが胸に迫る。米国からの返還映画である本作には冒頭のクレジット部分が欠落している。


5路傍の石(130分・35mm・白黒)

  • 2024年10月8日(火) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月13日(日) 3:30 PM@長瀬記念ホール OZU

1938(日活多摩川)(監)田坂具隆(原)山本有三(脚)荒牧芳郎、高重屋四郎(撮)伊佐山三郎、碧川道夫、永塚一榮(美)松山崇(音)中川榮三(出)片山明彦、山本礼三郎、瀧花久子、小杉勇、井染四郎、澤村貞子、江川宇禮雄、星美千子

勉強好きの少年・吾一(片山)は家が貧しく中学に進学できそうにない。やがて父の借金のカタに丁稚奉公に出されてしまう。逆境にありながらも吾一は実直に人生を切り拓いていこうとする。山本有三の原作は連載中に戦時下の検閲により執筆を断念し未完となるが、本来は吾一が青年になり最後に少年時代を否定していく構想であった。原作者の故郷栃木でロケし明治時代の時代考証に力を入れた。文部省旧蔵16mmポジをもとに作製したオリジナル版を上映。


6爆音(84分・35mm・白黒)

  • 2024年10月17日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月20日(日) 12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月8日(金) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1939(日活多摩川)(監)田坂具隆(原・脚)伊藤章三(撮)伊佐山三郎、氣賀靖吾、相坂操一(美)梶芳朗(音)中川栄三(出)小杉勇、轟夕起子、片山明彦、花柳小菊

NEW

陸軍航空兵となった息子が村の献納した戦闘機に乗って飛来するという報せを受けた村長(小杉)を中心に、農村の人々の日常が牧歌的な歌声とともにユーモラスに描かれている。戦意高揚映画かと見紛う題名だが、田坂が自作のなかで「かわいいような好きさでは一番」とする作品。


7土と兵隊[最長版](153分・35mm・白黒)

  • 2024年10月19日(土) 6:30 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月6日(水) 6:20 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月8日(金) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1939(日活多摩川)(監)田坂具隆(原)火野葦平(脚)笠原良三、陶山鐡(撮)伊佐山三郎、橫田逹之(美)柴田篤二(音)中川榮三(出)小杉勇、山本礼三郎、井染四郎、菊地良一、長尾敏之助

NEW

従軍経験にもとづく火野葦平の「兵隊三部作」の一篇を映画化。日中戦争のさなか、長期の中国ロケを敢行した田坂は、行軍の様子を目の当たりにし、戦場をひたすら歩く兵士たちの姿を描き出した。現地軍の協力を得た戦争場面に加え、戦争がもたらす惨禍や敵兵を含む兵士たちの人間性に着目した田坂のヒューマニズムが光る。返還映画に由来する既所蔵版(144分)に欠けていたフッテージを、このたび新たに日活所蔵原版から補い、公開当時の長さ(155分)にきわめて近い、現存最長版を作製した。

上映前解説あり(約10分)

10/19(土)6:30pmの回は当館研究員による上映前解説(約10分)がございます。


8海軍(85分・35mm・白黒・不完全)

  • 2024年11月5日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月8日(金) 7:30 PM@長瀬記念ホール OZU

1943(松竹京都)(監・脚)田坂具隆(原)岩田豊雄(脚)澤村勉(撮)伊佐山三郎(美)六郷俊(音)内田元(出)山内明、瀧花久子、小杉勇、志村久、水戸光子、風見章子、青山和子、東野英治郎

太平洋戦争開戦から2周年の節目に、岩田豊雄(獅子文六)の朝日新聞連載小説を原作に製作された情報局国民映画。海軍報道部の企画により多額の予算が投入され、市川哲夫が担当した特撮にも力を入れた。鹿児島の商家に生まれた青年(山内)が江田島の兵学校を経て海軍に入隊し、やがて真珠湾作戦に駆り出されていく。オリジナルは132分で、本返還映画版には終盤の潜航艇による突撃の場面などが欠落。


9情報局制定 必勝歌/君と僕(計104分)

  • 2024年11月6日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月9日(土) 12:00 PM@長瀬記念ホール OZU

情報局制定 必勝歌(80分・35mm・白黒)

1945(松竹京都・大船)(監・原)田坂具隆(監・脚)淸水宏(監)マキノ正博、溝口健二、大曽根辰夫、高木孝一、市川哲夫(脚)岸松雄(撮)竹野治夫、斎藤毅、行山光一、三木滋人(美)堀保治(出)佐野周二、小杉勇、齊藤達雄、高田浩吉、澤村アキヲ、河村黎吉、高峰三枝子、轟夕起子、田中絹代、上原謙、坂本武

情報局が募集した国民歌の1等当選作「必勝歌」の発表にあわせて、松竹両撮影所の総力を挙げて短期間で製作された。前線で出撃前の兵士達が故郷に思いをはせるという枠物語。小杉勇はユーモラスな隣組長と特攻隊飛行隊長の二役に扮し、後者では『限りなき前進』(1937)でも歌った「さんさ時雨」を散華した兵士の遺族の前で披露した。

君と僕(24分・35mm・白黒・部分)

1941(朝鮮軍報道部)(監・脚)日夏英太郎(脚)飯島正(撮)森尾鉄郎(音)佐藤長助(出)小杉勇、三宅邦子、永田絃次郎、朝霧鏡子、金素英、李香蘭、徐月影

1938年に始まった陸軍の特別志願兵制度を背景にして、君(朝鮮)と僕(内地)とが手を握り合う「内鮮一体」を理想に掲げて製作された劇映画。情報局の嘱託の立場で田坂が監督指導を行った。現存しているのは全10巻(96分)のうち1巻目と9巻目の一部である。


10どぶろくの辰(94分・35mm・白黒)

  • 2024年10月15日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月22日(金) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1949(大映東京)(監)田坂具隆(原・脚)中江良夫(撮)伊佐山三郎(美)柴田篤二(音)斎藤一郎(出)辰巳柳太郎、水戸光子、入江たか子、伊沢一郎、菅井一郎、河津清三郎、船越英二

被曝後の田坂が闘病を経て大映東京撮影所で発表した戦後第1作。新国劇の戯曲が原作で、舞台でも同役を演じていた辰巳柳太郎の映画初主演作となった。北海道の道路工事に従事する辰(辰巳)は、飯場で働くしの(水戸)に想いを寄せる。一方、飲み屋で働く梅子(入江)は辰を慕っていた。田坂が封切後も撮影を続け、納得いくように仕上げた稀有な作品。


11雪割草(100分・35mm・白黒)

  • 2024年10月10日(木) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月19日(土) 12:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1951(大映東京)(監)田坂具隆(脚)山崎謙太(撮)伊佐山三郎(美)柴田篤二(音)齋藤一郎(出)水戸光子、宇佐美諄、三條美紀、伊庭輝夫

夫(宇佐美)の留守中、手紙を携えて一人の少年(伊庭)がやって来た。妻(三條)が手紙を読むと、少年はかつて夫が戦時中に関係した女性との間に生まれた子どもだという。主に4人の登場人物により室内で展開される本作の撮影は、時間の経過とともに変化する陰影を見事に捉えている。本作でデビューした伊庭輝夫の祖父は浅草オペラの発展に寄与した伊庭孝。

上映後挨拶あり(約10分)

10/19(土)12:00pmの回は伊庭輝夫氏による上映後挨拶(約10分)がございます。


12長﨑の歌は忘れじ[短縮版](118分・35mm・白黒)

  • 2024年10月16日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月9日(土) 2:50 PM@長瀬記念ホール OZU

1952(大映東京)(監・原)田坂具隆(脚)沢村勉(撮)伊佐山三郎(美)柴田篤二(音)早坂文雄(出)京マチ子、アーリントン・ロールマン、久我美子、根上淳、滝沢修、山内明、滝花久子

南方の捕虜収容所で病死した日本兵(山内)の未完の楽譜「心の真珠」を遺族に届けるため、米国人ヘンリーが兵士の故郷長崎を訪れる。かつての敵国人が完成させた楽曲が、被曝して盲目となった兵士の妻(京)の頑なな心を開くという物語は、被曝者である田坂が闘病生活の間に構想したもので、音楽を通じた平和への願いが込められている。オリジナルは131分だが、のちに再編集された国際版の可能性がある。


13女中ッ子(142分・35mm・白黒)

  • 2024年10月10日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月19日(土) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1955(日活)(監・脚)田坂具隆(原)由起しげ子(脚)須崎勝彌(撮)伊佐山三郎(美)木村威夫(音)伊福部昭(出)伊庭輝夫、左幸子、佐野周二、轟夕起子、東山千栄子、高田敏江、細川ちか子、北林谷栄、宍戸錠

田坂が新生日活で最初に撮った作品。東北の山村から上京し、恩人の家のお手伝いさんとなった初(左)は、問題児の次男坊・勝美(伊庭)と心を通わせていく。左幸子が快活な魅力を発揮し、『雪割草』に続いて伊庭輝夫が子どもの内面を好演。田坂は初を通して古来からある東北の風土と人情を都会生活と対比して描いた。


14乳母車(109分・35mm・白黒・英語字幕付 with English subtitles)

  • 2024年10月9日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月12日(土) 7:10 PM@長瀬記念ホール OZU

1956(日活)(監)田坂具隆(原)石坂洋次郎(脚)澤村勉(撮)伊佐山三郎(美)木村威夫(音)齋藤一郎(出)石原裕次郎、芦川いづみ、新珠三千代、山根壽子、宇野重吉

父の愛人関係を清算させようとする娘(芦川)とその愛人の弟(石原)、父と愛人の間に生まれた赤ん坊をとおして、戦後世代への希望に満ちたメッセージが謳われている。芦川いづみと石原裕次郎の初めての共演作にして田坂との初タッグとなった一作。裕次郎は田坂に全幅の信頼を寄せ、『太陽の季節』(1956、古川卓巳)以来のイメージを一新し、新しい若者像を描く作品となった。


15今日のいのち(156分・35mm・白黒)

  • 2024年11月15日(金) 6:20 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月21日(木) 6:20 PM@長瀬記念ホール OZU

1957(日活)(監・脚)田坂具隆(原)由起しげ子(脚)沢村勉(撮)伊佐山三郎(美)木村威夫(音)齊藤一郎(出)北原三枝、津川雅彦、山根寿子、森雅之、石原裕次郎、安井昌二、金子信雄、織田政雄、浅丘ルリ子、伊達信、小林旭

戦災で焼けた実家の病院を自らの手で再建しようと、その夢を約束してくれた従兄の医師・朝巳(安井)のプロポーズを承諾する理子(北原)。だが朝巳の義理の弟で、理子と似た出生の事情を抱える岳二(津川)の一途な思慕を知り激しく動揺する。周囲の打算と嫉妬の渦中にも、岳二の純愛に向き合おうと苦悩する理子の姿を捉え続け、北原も代表作に挙げる一篇となった。


16陽のあたる坂道(209分・35mm・白黒)

  • 2024年11月17日(日) 12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月21日(木) 1:30 PM@長瀬記念ホール OZU

1958(日活)(監・脚)田坂具隆(原)石坂洋次郎(脚)池田一朗(撮)伊佐山三郎(美)木村威夫(音)佐藤勝(出)石原裕次郎、北原三枝、芦川いづみ、川地民夫、小髙雄二、山根寿子、千田是也、轟夕起子、小杉勇

父と愛人の間に生まれた子どもとして屈折を抱えて生きてきた青年・信次(石原)。やがて妹の家庭教師として雇われたたか子(北原)との出会いが彼に変化をもたらしていく。『エデンの東』(1955、エリア・カザン)に着想を得た原作を熟練の演出で見応えのある大作に仕立てた。本作でフィルムの長さを巡り日活と揉めたことが田坂の退社の原因となる。

途中に約10分間の休憩時間を設けます。


17若い川の流れ(127分・35mm・白黒)

  • 2024年11月17日(日) 4:20 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月22日(金) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU

1959(日活)(監・脚)田坂具隆(原)石坂洋次郎(脚)池田一朗(撮)伊佐山三郎(美)木村威夫(音)佐藤勝(出)石原裕次郎、北原三枝、芦川いづみ、小高雄二、川地民夫、山根寿子、轟夕起子、千田是也、東野英治郎

突然、専務の娘(芦川)と奇妙な見合いをさせられた曽根健助(石原)。同じ職場のリーダー格のみさ子(北原)が専務夫人に健助を推薦したからだった。異なる結婚観を戦わせつつ徐々に関係を築いていく男女をユーモアたっぷりに描いた青春映画。タイトルデザイン、反復されるレコードの挿話等、田坂映画特有の洒落っ気も随所に現れる。日活での最後の作品。


18親鸞(147分・35mm・カラー)

  • 2024年11月14日(木) 2:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月20日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1960(東映京都)(監)田坂具隆(原)吉川英治(脚)成沢昌茂(撮)坪井誠(美)桂長四郎(音)伊福部昭(出)中村錦之助、中村賀津雄、丘さとみ、吉川博子、木暮実千代、大河内伝次郎、岡田英次、千秋実

日活退社後、東映での第1作として製作された田坂初 の本格的時代劇であり、初のカラー作品。実社会と 仏道の矛盾に困惑し、関白の息女である玉日姫(吉 川)への恋心に悶える青年時代の親鸞(中村錦之助) を描く。一人の青年の成長物語を中心に据え、葛藤 を抱えながらも修行を続ける姿が瑞々しい色彩ととも にワイドスクリーンいっぱいに展開される。


19続 親鸞(127分・35mm・カラー)

  • 2024年11月14日(木) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月20日(水) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU

1960(東映京都)(監)田坂具隆(原)吉川英治(脚)成沢昌茂(撮)坪井誠(美)桂長四郎(音)伊福部昭(出)中村錦之助、月形龍之介、中村賀津雄、丘さとみ、吉川博子

『親鸞』2部作の後篇。玉日姫への愛情と仏道精進の 間で迷う親鸞は、庶民から慕われる法然(月形)の教 えに接することで戒律に縛られることなく人間的な妻 帯の道に進むことを決める。興行的にヒットした功績 が認められ、京都市民映画祭監督賞を受賞した。


20はだかっ子(146分・35mm・カラー・英語字幕付 with English subtitles)

  • 2024年10月18日(金) 6:40 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月24日(日) 12:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1961(ニュー東映東京)(監)田坂具隆(原)近藤健(脚)成沢昌茂(撮)飯村雅彦(美)下沢敬悟(音)佐藤勝(出)有馬稲子、木暮実千代、伊藤敏孝、三国連太郎、小宮光江、千秋実、織田政雄

戦争で父を亡くした少年・元太(伊藤)は母(木暮)と貧しさにめげず、健気に暮らしていたが、やがて母が病気で倒れてしまう。ユネスコ村や米軍基地を抱えた戦争の傷跡が多く残る昭和30年代の所沢周辺でロケが行われた。走る少年の姿に子どもに託した未来への思いが込められている。元太の同級生の一人を子役時代の風間杜夫が演じている。


21ちいさこべ(170分・35mm・カラー)

  • 2024年10月18日(金) 2:50 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月9日(土) 6:10 PM@長瀬記念ホール OZU

1962(東映京都)(監・脚)田坂具隆(原)山本周五郎(脚)鈴木尚之、野上竜雄(撮)坪井誠(美)桂長四郎(音)伊福部昭(出)中村錦之助、江利チエミ、中村賀津雄、桜町弘子、東千代之介、吉川博子、木暮実千代、渥美清

江戸の大火で両親と財産を失った大工の茂次(中村錦之助)は、幼馴染のおりつ(江利)とともに焼け出された孤児たちの世話をすることとなる。茂次は貧しい人たちの長屋を建てることで、伝統はただ墨守するものではなく、生活の場におりてこそ新しい生命をもつことを知る。壮絶な最期を遂げる孤児でやくざ者の利吉を中村賀津雄が見事に演じた。


22五番町夕霧樓(137分・35mm・カラー・英語字幕付 with English subtitles)

  • 2024年11月19日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月23日(土) 3:40 PM@長瀬記念ホール OZU

1963(東映東京)(監・脚)田坂具隆(原)水上勉(脚)鈴木尚之(撮)飯村雅彦(美)森幹男(音)佐藤勝(出)佐久間良子、木暮実千代、丹阿弥谷津子、岩崎加根子、河原崎長一郎、千秋実、宮口精二

金閣寺放火事件を題材にした水上勉の同名小説を映画化。京都五番町の遊郭「夕霧樓」に連れてこられた夕子(佐久間)と、吃音を持った幼馴染で青年僧の正順(河原崎)による悲恋物語。佐久間良子はヤクザ映画全盛の東映のなかで女性文芸映画のヒロインを演じ田坂の期待にこたえた。


23(165分・35mm・カラー)

  • 2024年10月15日(火) 6:10 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月23日(土) 12:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1964(東映京都)(監)田坂具隆(原)眞継伸彦(脚)鈴木尚之(撮)飯村雅彦(美)鈴木孝俊(音)佐藤勝(出)中村錦之助、三田佳子、宮園純子、木暮実千代、加東大介、河原崎長一郎、千秋実

NEW

海岸沿いの村で貧しい生活を送っていたサメ(中村)は、母の死をきっかけにして京へ旅立つ。荒廃した京でサメは悪行の限りを尽くし生き延びる。ある晩、尼寺を襲い、一人の尼僧(三田)を前にしたことで人間性をとり戻す。田坂作品には珍しく残酷描写のある異色作。


24冷飯とおさんとちゃん(178分・35mm・カラー)

  • 2024年10月17日(木) 5:50 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年10月20日(日) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1965(東映京都)(監)田坂具隆(原)山本周五郎(脚)鈴木尚之(撮)飯村雅彦(美)鈴木孝俊(音)佐藤勝(出)中村錦之助、三田佳子、森光子、新珠三千代、渡辺美佐子、入江若葉、三木のり平、大坂志郎、小沢昭一

山本周五郎の3つの短篇小説「ひやめし物語」「おさん」「ちゃん」をオムニバス形式で映画化。中村錦之助は演技者として飛躍するきっかけをつくった田坂を師と仰いでいた。古書蒐集が趣味の若侍、青年期の妻との関係に悩む大工、火鉢職人の父親を見事に演じ分け、相手役の新たな存在感を引き出した。


25湖の琴(129分・35mm・カラー)

  • 2024年11月15日(金) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月19日(火) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月23日(土) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU

1966(東映京都)(監)田坂具隆(原)水上勉(脚)鈴木尚之(撮)飯村雅彦(美)鈴木孝俊(音)佐藤勝(出)佐久間良子、中村賀津雄、中村鴈治郎、千秋実、木暮実千代、悠木千帆、田中邦衛

NEW

余呉湖のほとりで糸取女として雇われたさく(佐久間)は、同郷の宇吉(中村嘉津雄)と次第に惹かれあっていく。やがて宇吉が兵役で工場を離れ、さくは有名な長唄の師匠、桐屋紋左衛門(中村鴈治郎)に見初められて京都へ移ると非情な運命が男女を襲う。ラストの実験的な舞踏シーンをはじめ色彩表現に趣向を凝らしている。


26スクラップ集団(106分・35mm・カラー)

  • 2024年10月18日(金) 12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月22日(金) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月24日(日) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1968(松竹大船)(監)田坂具隆(原)野坂昭如(脚)鈴木尚之(撮)小杉正雄(美)重田重盛(音)佐藤勝(出)渥美清、小沢昭一、露口茂、奈美悦子、宮本信子、滝花久子、笠置シズ子、三木のり平

NEW

大阪の釜ヶ崎を舞台に、し尿収集運搬業(渥美)、ケースワーカー(露口)、公園清掃員(小沢)、医師(三木)がスクラップ回収業を開業し奮闘するさまを描く田坂の遺作。文明批判を込めながらも詩情を失わないクールな喜劇を目指した。


田坂監督ゆかりの人々とその作品


27遅咲きの花 他(計104分)

  • 2024年11月12日(火) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月16日(土) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU

遅咲きの花(50分・35mm・白黒)

1939(日活多摩川)(監)伊賀山正徳(原)一堺漁人(曾我廼家五郎)(脚)黒岩健而、秋田淳(撮)渡辺五郎(出)高木永二、瀧花久子、星美千子、ドングリ坊や、大中清子、尾崎輔、二宮明子、飛田喜佐夫、村田宏寿、黒田記代

NEW

優秀な小学生の娘を持つ会社の門衛夫婦が、落ちると思って最難関の中学を受験させることで起こる悲喜劇。星美千子は田坂の『路傍の石』で主役の少年を見下す大店の娘を演じたが、この作では一転して庶民の健気な娘を演じた。京都出身の瀧花の持ち味が発揮された作品。メインタイトル及びクレジットが欠落している。

感激の一夜(43分・35mm・白黒)

1939(日活多摩川)(監)小西達三郎(原)赤川武助(脚)北村勉(撮)瀧花唫一(美)梶芳朗(音)大久保德二郎(出)山本嘉一、伊藤哲雄、見明凡太郎、上代勇吉、橘公子、井上敏正

NEW

田坂の助監督を務めた小西達三郎による初監督作であり、瀧花久子の弟・瀧花唫一の撮影監督デビュー作。父親が戦死し、祖父(山本)と二人暮らしの少年(伊藤)が暮らす村に兵隊が分宿することになり、兵士が好きだというお汁粉をご馳走しようと準備するが…。貧困生活のなか、必死に働く少年を通して、農村での銃後生活を描く。

大地の楽園(11分・35mm・白黒・部分)

1940(日活多摩川)(監)小西達三郎(脚)永見隆二(撮)瀧花唫一(出)伊沢一郎、姫美谷接子、斎藤紫香

NEW

監督・小西と撮影・瀧花による新人コンビの第3作。新婚のサラリーマン(伊沢)が会社の奨励する家庭菜園の品評会に参加する。現存フィルムは52分のうち冒頭11分のみ。欠落部分では、彼の田舎の父親が送ってきた野菜が1等を獲得したことが明るみになる。


28限りなき前進[改篇版](計87分)

  • 2024年11月13日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月16日(土) 4:30 PM@長瀬記念ホール OZU

限りなき前進[改篇版](77分・35mm・白黒・英語字幕付 with English subtitles)

1937(日活多摩川)(監)内田吐夢(原)小津安二郎(脚)八木保太郎(撮)碧川道夫(美)堀保治(出)小杉勇、江川宇礼雄、轟夕起子、滝花久子、片山明彦、飛田喜佐夫、紅沢葉子、北竜二

定年制の施行によって人生設計を狂わされた老サラリーマン(小杉)の悲哀を描く。当初は小津映画の企画「愉しき哉保吉君」 だったが、暗すぎると城戸四郎のOKが得られず、盟友の内田が日活で映画化した。現存フィルムは結末部がぼかされた戦後の改篇版であり、本来の演出意図は説明字幕で補完されている。田坂と小杉の住む桜上水でロケし、轟と江川が登場する畑の場面の背景には田坂邸が映っている。

トーキーステージ竣工式実況(10分・35mm・白黒)

1936(日活)

1935年11月の日活東京撮影所のトーキーステージ竣工式での常務取締役・堀久作の挨拶を収めたもの。挨拶の内容とシンクロするようにスタジオの新設備が紹介されていくくだりは興味深い。アメリカのウェスタン・エレクトリック方式を採用したこの鉄筋コンクリート建ての第3、第4ステージは『人生劇場』(1936、内田吐夢)など日活多摩川の黄金時代を築くトーキーの代表作を生み出していく。


29母に捧ぐる歌/家なき娘(計103分)

  • 2024年11月13日(水) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月16日(土) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU

母に捧ぐる歌(71分・35mm・白黒)

1939(新興東京)(監・原)伊奈精一(脚)中田龍雄(撮)中井朝一(美)小池一美(音)齋藤一郎(出)高野由美、杉山美子、宇佐美淳、美鳩まり、菅井一郎、浦辺粂子、田中春男、古川登美、歌川八重子

監督の伊奈精一は1926年に田坂と同時に監督デビューを果たし、戦後に監督業から遠ざかって以降も生涯、友情関係は続いた。幸せな生活から一変、父を肺病で亡くし、その姑の思惑で、生活力の乏しい母・紀子(高野)とも引き離されてしまう幼い光子(杉山)。だが亡き父が生前、童謡コンテストに応募していた歌詞「母に捧ぐる歌」が入選し、彼女はその歌手としてデビューすることになる。

家なき娘(32分・35mm・白黒・部分)

1939(新興東京)(監)伊奈精一(原)エクトル・マアロウ(脚)如月敏(撮)古泉勝男(音)斎藤一郎(出)美鳩まり、大井正夫、淡島みどり、宇佐美淳、浦辺粂子、植村謙二郎、瀧鈴子

サイレント時代に田坂が『愛の町』で翻案した「家なき娘」を、その11年後に伊奈がふたたび翻案。旅の途中で母を亡くした娘(美鳩)が、事情があって名乗りあえない祖父(大井)の紡績工場で秘書として働き、盲目で頑なな祖父の心をときほぐしていく。オリジナル73分のうち中間部分の32分のみ現存。


30特急三百哩/暢気眼鏡(計122分)

  • 2024年10月12日(土) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月12日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU

10月12日(土) 4:00 PM ♪伴奏付上映
伴奏:神﨑えり

特急三百哩(93分・16fps・35mm・無声・白黒)

1928(日活大将軍)(監)三枝源次郎(原・脚)木村千疋男(撮)氣賀靖吾(美)廣瀨秀次(出)島耕二、瀧花久子、中村政登志、三田 實、津島ルイ子、大﨑史朗、山本嘉一

若き機関手(島)と曲芸団の娘(瀧花)の恋模様に加えて、随所に挿入されている迫力ある蒸気機関車の映像が見どころ。プラネット映画資料図書館所蔵の可燃性プリントから作られた復元版。三枝は彼の初監督作『民族の黎明』(1924)以来、田坂が助監督時代に師事した監督の一人。また島とのコンビで鳴らした新進スター時代の瀧花の魅力を伝える貴重な作品。

暢気眼鏡(29分・35mm・白黒・不完全)

1940(日活多摩川)(監)島耕二(原)尾崎一雄(脚)館岡謙之助、北村勉(撮)相坂操一(出)杉狂児、轟夕起子、山田治子、星ひかる、藤村昌子、笠原恒彦、長尾敏之助

小杉勇と並びサイレント時代の数々の田坂映画で主役を務めた島耕二は、1939年にスター俳優の座を捨て念願の監督に転身、この作品では芥川賞受賞作の映画化に情熱を燃やした。貧乏作家の真木(杉)は雨漏りするほどのボロ家に家族3人で暮らしているが、明朗快活な妻の芳江(轟)が一家を明るく支えている。オリジナル78分のうち現存するのは29分だが、この部分だけでも賑やかな喜劇の魅力が溢れている。


31最後の一兵まで(81分・35mm・白黒)

UNTERNEHMEN MICHAEL

  • 2024年11月7日(木) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月10日(日) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1937(独:ウーファ)(監・脚)カール・リッター(原)ハンス・フリッツ・フォン・ツヴェール(脚)マティアス・ヴィーマン他(撮)ギュンター・アンダース(美)ヴァルター・レーリッヒ(音)ヘルベルト・ヴィント(出)ハインリッヒ・ゲオルゲ、マティアス・ヴィーマン、パウル・オットー

第一次大戦末期、北フランスの「迷路」と呼ばれる陣地で抵抗を試みる英軍に対し、独軍が総攻撃を仕掛ける。国策映画を多数演出したカール・リッターが、敵軍の包囲下にある味方を砲撃せざるを得ない軍司令部の苦悩を繊細に描き出す。田坂自身も参加した『スタア』(1940年2月上旬号)誌上の合評会で「初めと終りラストは違うがあとは『五人の斥候兵』に似ている」とも評された。


32誓ひの休暇(87分・35mm・白黒)

URLAUB AUF EHRENWORT

  • 2024年11月5日(火) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
  • 2024年11月10日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU

1938(独:ウーファ)(監)カール・リッター(原)キリアン・コル、ヴァルター・ブレーム(原・脚)チャルズ・クライン(脚)チャルズ・クライン(撮)ギュンター・アンダース(美)ヴァルター・レーリヒ(音)エルネスト・エーリヒ・ブーダー(出)ロルフ・メービウス、インゲボルク・テーク、フリッツ・カンパース、ベルタ・ドレウス

第一次大戦の終盤、前線に向かう途中に立ち寄ったベルリン駅にて、小隊長が独断で兵士たちに6時間の「休暇」を与える。出自の異なる兵士らの自由行動を多面的に捉えたカール・リッターの構成力が称賛された。日本では1941年に検閲不許可。試写で見た田坂はナチスの国策映画に与えられた芸術表現の幅や自由度の高さに感激し、悔しさを滲ませていた。


■チケットのオンライン発売は各上映日の3日前正午からとなります。
■チケットのオンライン完売情報は、公式チケットサイトにてご確認ください。
■各回の開映後の入場はできません。予告篇はなく、本篇から上映します。


 

2024年10月8日(火)

11:00 AM 開館

2024年10月8日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年10月8日6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
5路傍の石(130分)

2024年10月9日(水)

11:00 AM 開館

2024年10月9日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
14乳母車(109分)
2024年10月9日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年10月10日(木)

11:00 AM 開館

2024年10月10日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
13女中ッ子(142分)
2024年10月10日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
11雪割草(100分)

2024年10月11日(金)

11:00 AM 開館

2024年10月11日3:30 PM@長瀬記念ホール OZU

♪弁士:片岡一郎/伴奏:柳下美恵
2月よりの使者(147分)
2024年10月11日7:30 PM@長瀬記念ホール OZU
4五人の斥候兵(72分)

2024年10月12日(土)

11:00 AM 開館

2024年10月12日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU

♪伴奏:天池穂高
1更生/愛の町(計115分)
2024年10月12日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU

♪伴奏:神﨑えり
30特急三百哩/暢気眼鏡(計122分)
2024年10月12日7:10 PM@長瀬記念ホール OZU
14乳母車(109分)

2024年10月13日(日)

11:00 AM 開館

2024年10月13日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年10月13日3:30 PM@長瀬記念ホール OZU
5路傍の石(130分)

2024年10月15日(火)

11:00 AM 開館

2024年10月15日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
10どぶろくの辰(94分)
2024年10月15日6:10 PM@長瀬記念ホール OZU
23(165分)

2024年10月16日(水)

11:00 AM 開館

2024年10月16日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年10月16日6:30 PM@長瀬記念ホール OZU
2月よりの使者(147分)

2024年10月17日(木)

11:00 AM 開館

2024年10月17日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
6爆音(84分)
2024年10月17日5:50 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年10月18日(金)

11:00 AM 開館

2024年10月18日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年10月18日2:50 PM@長瀬記念ホール OZU
21ちいさこべ(170分)
2024年10月18日6:40 PM@長瀬記念ホール OZU
20はだかっ子(146分)

2024年10月19日(土)

11:00 AM 開館

2024年10月19日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU

上映後挨拶あり
11雪割草(100分)
2024年10月19日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
13女中ッ子(142分)
2024年10月19日6:30 PM@長瀬記念ホール OZU

上映前解説あり
7土と兵隊[最長版](153分)

2024年10月20日(日)

11:00 AM 開館

2024年10月20日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
6爆音(84分)
2024年10月20日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年11月5日(火)

11:00 AM 開館

2024年11月5日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
8海軍(85分)
2024年11月5日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
32誓ひの休暇(87分)

2024年11月6日(水)

11:00 AM 開館

2024年11月6日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月6日6:20 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年11月7日(木)

11:00 AM 開館

2024年11月7日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
4五人の斥候兵(72分)
2024年11月7日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年11月8日(金)

11:00 AM 開館

2024年11月8日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
6爆音(84分)
2024年11月8日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月8日7:30 PM@長瀬記念ホール OZU
8海軍(85分)

2024年11月9日(土)

11:00 AM 開館

2024年11月9日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月9日2:50 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月9日6:10 PM@長瀬記念ホール OZU
21ちいさこべ(170分)

2024年11月10日(日)

11:00 AM 開館

2024年11月10日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
32誓ひの休暇(87分)
2024年11月10日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年11月12日(火)

11:00 AM 開館

2024年11月12日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月12日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年11月13日(水)

11:00 AM 開館

2024年11月13日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月13日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年11月14日(木)

11:00 AM 開館

2024年11月14日2:00 PM@長瀬記念ホール OZU
18親鸞(147分)
2024年11月14日6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
19続 親鸞(127分)

2024年11月15日(金)

11:00 AM 開館

2024年11月15日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
25湖の琴(129分)
2024年11月15日6:20 PM@長瀬記念ホール OZU
15今日のいのち(156分)

2024年11月16日(土)

11:00 AM 開館

2024年11月16日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月16日4:30 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月16日7:00 PM@長瀬記念ホール OZU

2024年11月17日(日)

11:00 AM 開館

2024年11月17日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月17日4:20 PM@長瀬記念ホール OZU
17若い川の流れ(127分)

2024年11月19日(火)

11:00 AM 開館

2024年11月19日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
22五番町夕霧樓(137分)
2024年11月19日6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
25湖の琴(129分)

2024年11月20日(水)

11:00 AM 開館

2024年11月20日3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
18親鸞(147分)
2024年11月20日6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
19続 親鸞(127分)

2024年11月21日(木)

11:00 AM 開館

2024年11月21日1:30 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月21日6:20 PM@長瀬記念ホール OZU
15今日のいのち(156分)

2024年11月22日(金)

11:00 AM 開館

2024年11月22日1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
2024年11月22日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
10どぶろくの辰(94分)
2024年11月22日6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
17若い川の流れ(127分)

2024年11月23日(土)

11:00 AM 開館

2024年11月23日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
23(165分)
2024年11月23日3:40 PM@長瀬記念ホール OZU
22五番町夕霧樓(137分)
2024年11月23日6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
25湖の琴(129分)

2024年11月24日(日)

11:00 AM 開館

2024年11月24日12:00 PM@長瀬記念ホール OZU
20はだかっ子(146分)
2024年11月24日4:00 PM@長瀬記念ホール OZU

弁士・伴奏付上映出演者

10月11日(金) 3:30 PM 『月よりの使者』

澤登 翠(さわと・みどり)/活動写真弁士
1972年故松田春翠に入門。弁士の第一人者として国内外の公演を通して幅広い世代に活弁の魅力を伝えている。活弁の継承者としての活動が評価され文化庁映画賞・松尾芸能賞特別賞他数々の賞を受賞。2015年『文藝春秋』に掲載の「日本を代表する女性120人」にも選出されている。

柳下美恵(やなした・みえ)/ピアノ
武蔵野音楽大学有鍵楽器専修(ピアノ)卒業。1995年、映画生誕百年祭「光の生誕リュミエール!」以来、国内外の映画館、映画祭で伴奏多数。欧米スタイルの無声映画伴奏(弁士の語りがない音楽による伴奏)を日本で普及し「映画館にピアノを!」「ピアノ&シネマ」「ピアノdeフィルム」など映画館の上映環境作りに注力している。
※10/11の弁士は、澤登翠さんの体調不良により、片岡一郎さんに変更となりました。(10/11 11時50分更新)

伴奏付上映出演者[出演順]

10月12日(土) 1:00 PM『更生』『愛の町』

天池穂高(あまいけ・ほだか)/作曲、ピアノ
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院修了。2003年、フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)の特集「小津安二郎の藝術」にて、初めてサイレント映画の伴奏を担当。作編曲活動に加えて、バレエのレッスンピアニストとしても活動している。

10月12日(土) 4:00 PM『特急三百哩』『暢気眼鏡』

神﨑えり(こうざき・えり)/作曲、ピアノ
国立音楽大学作曲学科、パリ国立高等音楽院ピアノ即興演奏科卒業。作曲家・即興演奏家・ピアニストとして国内外で活躍し、即興演奏による映画伴奏にも力を入れている。ポルデノーネ無声映画祭、東京国際映画祭などの国際映画祭にて招待演奏を行い、高い評価を得ている。

  一般 高校・大学生・
65歳以上
小・中学生 障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで) キャンパスメンバーズ(教職員) キャンパスメンバーズ(学生)
通常料金 520円 310円 100円 無料
特別料金
印の回)
1,050円 840円 600円 無料 500円 400円
オンライン販売 各上映日の3日前正午から各上映回の開映15分前まで
窓口販売
(1F)
各上映回の開映1時間前から5分前まで若干数販売(座席選択不可)

 ♪印の回は弁士・伴奏付もしくは伴奏付上映です。

電子チケット購入方法
1. 本ホームページの上映日時(チケット購入)からご覧になりたい上映日時の「チケット購入」ボタンを選択。
2. 座席と券種を選択。
3. メールアドレスやクレジットカードまたはd払いの情報等必要事項を入力。
4. 申込が完了しますと、3. で入力したメールアドレスにQRコード付きのチケットが届きます。

・etix.comからのメールを受信できるよう予め設定をお願いします。
・申込済みチケットの照会はこちらの「申込済みチケット照会」を選択ください。
・詳しい購入手順の説明はこちら(PDF)をご参照ください。
・チケット購入方法についての「よくあるご質問」はこちらをご覧ください。
未就学児、優待の方は「障害者手帳をお持ちの方または付添者等券」をお求めください。

入場方法
・チケットのQRコードをスマホ画面、または印刷紙面でご提示ください。
・学生、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方、国立美術館のキャンパスメンバーズ、優待の方は証明できるものをご提示ください。ご提示のない方はご入場できません。
・料金区分の違うチケットでは入場できません。差額のお支払で観覧することはできません。
各回の開映後の入場はできません。予告篇はございません。
・開場は開映30分前です。

ご注意ください!
・特集名、作品名は電子チケットに表示されませんので、お間違いないようご購入、ご提示ください。
・窓口でご購入いただける当日券は各回1名につき1枚のみです。
・チケットのオンライン完売情報は、公式チケットサイトにてご確認ください。