過去の上映
- 2021.10.19 - 2021.11.23
●上映の感染症予防の対策およびご来館の皆様へのお願いにつきましては、当該ページ「新型コロナウイルス感染症拡大防止策」をご覧ください。 - 上映企画
没後40年 映画監督 五所平之助
Heinosuke Gosho Retrospective
会 期
2021年10月19日(火)-11月23日(火・祝)
会期中の休館日:月曜日
会 場
長瀬記念ホール OZU(2階)
定 員
310名(各回入替制・全席指定席)※10/1(金)更新
※ 新型コロナウイルス感染拡大などの状況により、変更が生じる可能性がございます。
随時、当館HPにて最新情報をご確認ください。
・マスク着用のない方の入館をお断りします。
・来館者全員に検温を行います。37.5℃以上の方は入館をお断りいたします。
・各回の開映後の入場はできません。
・館内でのチケット販売・発券はございません。障害者(付添者は原則1名まで)、
国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズの方も前売指定席券をお求めください。
概要
隣家から聞こえてくる音楽に悩まされる劇作家や幼いわが子の養育を重荷に感じる父親、相思相愛なのにすれ違いを繰り返す若い男女、過去の夫の出現に動揺する妻、戦地から帰還した父親に戸惑う子ども。映画監督・五所平之助(1902-1981)は、恋愛や家庭生活で悩み、共同体と摩擦を起こすこのような人物たちを、好んで取り上げました。そして、彼らが生み出す感情のざわめきを見つめ、哀しみやユーモアを描き続けました。
五所のキャリアは、松竹蒲田撮影所に助監督として入社した1923年に始まります(前年に清水宏、同年に小津安二郎も入社)。島津保次郎に師事した後、『南島の春』(1925)で監督デビュー、さらに『からくり娘』(1927)や『村の花嫁』(1928)などで現代劇の新鋭監督として同世代の中でいち早く頭角を現し、当時の撮影所長・城戸四郎の指揮のもと、島津や牛原虚彦監督らと並んで“蒲田調”を確立します。1931年には日本映画最初の本格的トーキー『マダムと女房』を成功させました。1934年には、若い映画人たちと「スタヂオF」を立ち上げ、交流の場としました。1941年に松竹を退社し、翌42年に大映に移籍して2作品を監督したのち、再び松竹に戻って『伊豆の娘たち』(1945)を撮影し、敗戦を迎えます。戦後は東宝で2作品を監督しますが、そのさなかに東宝争議が勃発し、五所は従業員組合側に付いて闘争に参加しますが、1950年、東宝から契約を解除されます。翌51年、仲間たちとともに「スタヂオ・エイト・プロ」を結成、新東宝と提携して独立プロダクションによる映画製作を行いました。その後も五所は歌舞伎座プロダクションや松竹で映画を撮り続け、最後の劇場公開作品となった『女と味噌汁』(1968)の後も、明治100周年を記念した『糸あやつり 人形劇映画 明治はるあき』(1968)や、1953年以降住み続けた三島市の記録映画『わが街三島 1977年の証言』(1977)を作り、晩年は病床にありながらも、最期まで松尾芭蕉の『奥の細道』の映画化を願い続けました。
本特集は、五所の没後40年という節目の年に、現存する最古の監督作品『マダムと女房』から遺作『わが街三島 1977年の証言』まで、計36本(33プログラム)の監督作と、五所の姿をとらえた3本の作品を上映する大規模な回顧特集です。当館ではフィルムセンター時代の1974年に開催した「五所平之助監督特集」以来、47年ぶりの特集となります。人間のたくましさも弱さも等しくとらえ続けた五所作品を通して、日本社会を生きる人々の等身大の姿があらためて浮かび上がってくることでしょう。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。
■(監)=監督・演出 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色 (撮)=撮影 (美)=美術 (音)=音楽 (出)=出演 (解)=解説・ナレーション (声)=声の出演
■スタッフ、キャスト欄の人名は原則として公開当時の表記を記載しています。
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。
■特集には不完全なプリントや状態の悪いプリントが含まれていることがあります。
上映作品詳細
1マダムと女房(56分・35mm・白黒・英語字幕付 with English subtitles)
- 2021年10月19日(火) 6:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月11日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
現存が確認されている最古の五所作品。当時スランプで悩み、新しいことを探し求めていたという五所が国産初の本格的なトーキー作品に挑んだ。同時録音という制約のなか、移動撮影や複数のキャメラでの撮影など工夫を凝らしている。劇作家の芦野(渡辺)が、騒がしい隣家に文句を言いに行くも、マダム(伊達)にたやすく丸め込まれるという喜劇。
2花嫁の寝言 他(計130分)
- 2021年10月19日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月6日(土) 5:40 PM@長瀬記念ホール OZU
花嫁の寝言(57分・35mm・白黒・英語字幕付 with English subtitles)
新妻の甘い寝言を聞こうと新婚家庭に夫の悪友たちが押しかける。『マダムと女房』で田中絹代独特の鼻にかかった甘いエロキューションが評判となったことから企画された一篇。五所はドラマの構成に音を巧みに用い、公開当時、トーキー映画の最高水準を示す作品と評価された。
花婿の寝言(73分・35mm・白黒・英語字幕付 with English subtitles)
『花嫁の寝言』の成功を受けて製作された作品。新興住宅地の家庭を舞台に、新婚サラリーマン夫婦の甘いやりとりが描かれる。川崎弘子が初々しい日本髪の新妻に扮して林長二郎の相手をつとめている。
3戀の花咲く 伊豆の踊子(124分・18fps・35mm・無声・白黒・英語字幕付 with English subtitles)
- 2021年10月20日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月7日(日) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
川端康成の同名小説の初の映画化で、五所の数多いサイレント映画のうち現存する最古の作品。伊豆の踊子(田中)と東京から来た学生(大日方)の間に芽生える淡い恋心を描く。後に五所はトーキーで作りたかったと語っているが、五所らしい細かなカット割りがサイレントの時代から一貫していることが確認でき、見ごたえがある。
4愛撫 他(計118分)
- 2021年10月21日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月10日(水) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
「十九の春」撮影風景(5分・16fps・16mm・無声・白黒)
五所作品『十九の春』(1933)の撮影風景を収めた記録映像。五所をはじめ、主演の伏見信子や当時9歳の高峰秀子の素顔を見ることができる。
愛撫 (113分・20fps・16mm・無声・白黒)
温泉町の名医である父(新井)とその期待に応えられない息子(渡辺)の葛藤を描いたドラマで、脚本は五所と数多くの名作を生んだ伏見晁。緩急をつけた撮影・編集技法の巧みさはもちろんのこと、看板の印象的な使い方からも、五所の語りの多彩さをうかがい知ることができる。
5人生のお荷物 他(計76分)
- 2021年10月20日(水) 6:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月6日(土) 3:20 PM@長瀬記念ホール OZU
あこがれ[スタヂオF版](10分・16fps・35mm・無声・白黒)
川喜田壮太郎が五所作品『あこがれ』(1935)のロケ現場で撮影し、一本の短篇に仕上げた作品。
人生のお荷物(66分・35mm・白黒)
初老の夫婦(斎藤、吉川)がようやく3人の娘を嫁がせ、ほっと一息つくや、末っ子の坊や(葉山)の存在に途方に暮れる、という松竹蒲田得意の小市民喜劇。父・息子の関係が物語の軸だが、娘夫婦(田中、小林)が親のすねを齧って営むモダンな生活も興味深い。現存フィルムは、佐分利信演じる軍人のエピソードが戦後に削除されたバージョン。
6朧夜の女(111分・35mm・白黒)
- 2021年10月21日(木) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月6日(土) 12:30 PM@長瀬記念ホール OZU
大学生の誠一(徳大寺)はバーで働く照子(飯塚)を妊娠させてしまう。誠一から相談を受けた伯父の文吉(坂本)は、周囲には自分と照子の子と偽って引き取ることを決める。日常の所作を細やかに描く下町劇のように始まり、1人の女性の痛切な運命と無力な男たちを描くメロドラマに至る破格の作品。五所にとって最初の大船作品で、広くなったセットも存分に活用している。
7新道 前後篇 他(計139分)
- 2021年10月22日(金) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月23日(火) 3:40 PM@長瀬記念ホール OZU
新道 前篇 朱実の巻(64分・35mm・白黒)
新道 前篇の梗概(7分・35mm・白黒)
新道 後篇 良太の巻(68分・35mm・白黒)
五所は本作で初めて長篇小説の映画化に挑んだ。一平(佐野)の子どもを身ごもった朱実(田中)だが、彼は事故死してしまい、その弟の良太(上原)に求婚される。急転直下の展開の一方で、朱実と子のために結婚を申し込み、尽くそうとする良太を演じる上原謙の姿に、1930年代の新たなスター像がうかがえる。
*前篇上映後、休憩あり
8花籠の歌 他(計79分)
- 2021年10月23日(土) 3:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月9日(火) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
花よりだんご スタジオFのお花見(10分・16fps・35mm・無声・白黒)
スタヂオFのメンバーの花見が、五所、成瀨巳喜男、藤本眞澄、千葉早智子、忍節子、小林十九二、川喜田壮太郎らの笑顔とともに記録されている。原版は8mm。
花籠の歌(69分・35mm・白黒)
東京下町出身の五所が取り組んだ人情劇。銀座裏のとんかつ屋を舞台に、看板娘の洋子(田中)をめぐる恋の鞘当てがにぎやかに展開される。主演の田中絹代が片思いを抱く学生に松竹三羽烏のひとり佐野周二が、松竹歌劇団の大スター“ターキー”に憧れる妹に高峰秀子が扮して歌声を聞かせる。
10五重塔(64分・35mm・白黒)
- 2021年10月22日(金) 6:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月13日(土) 12:30 PM@長瀬記念ホール OZU
『木石』の翌41年に五所は松竹を退社し、42年に大映に移籍して『新雪』を撮る。本作は大映での2作目で、原作は幸田露伴の名篇。谷中五重塔を建立するまでの、大工(花柳、柳)の敢闘と協力の精神を描いたもので、五所の手がけた“芸道もの”として興味深い。1996年にロシア・ゴスフィルモフォンドで発見された、オリジナルの長さ(67分)に近い版での上映。
9木石(124分・16mm・白黒)
- 2021年10月26日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月12日(金) 5:50 PM@長瀬記念ホール OZU
『花籠の歌』以降、結核で療養していた五所の復帰作。伝染病研究所の助手で未婚の母でもある初(赤木)は、娘の襟子(木暮)と医師の二桐(夏川)の交際を頑なに止めようとする。あまりに理不尽な初の態度に、襟子も二桐もその理由が分からず…。主役に異例の抜擢をされた新劇女優である赤木蘭子が異彩を放ち、過去に秘密を抱えた女性の孤立感が一層際立っている。
※上映プリントは全篇にわたりノイズ音を含んでおりますが、とくに開始から1時間26分ごろからのシーンで大きなノイズ音が続きます。予めご了承ください。※10/15(金)更新
11伊豆の娘たち(73分・35mm・白黒)
- 2021年10月26日(火) 6:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月7日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
静江(三浦)は離れに下宿している宮内(佐分利)に恋心を抱いているが、静江の父親・文吉(河村)はそれと知らず宮内の縁談話を進めてしまう。五所が戦争末期に「ここで少し潤いのある映画を作ろう」という意気込みで取りかかった本作は、戦意高揚を促す映画でないと見なされたことで敗戦後にも製作を続行し、『花婿太閤記』(1945、丸根賛太郎)とともに戦後初めて公開された日本映画となった。
12今ひとたびの(118分・35mm・白黒)
- 2021年10月24日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月11日(木) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
戦後、東宝に入社した五所は恋愛映画をという注文に応じて、高見順の小説を原作に、セツルメント勤務医(龍崎)と令嬢(高峰)という階層の違う男女が戦前から戦後にかけてすれ違う運命を描いた。松竹時代からの盟友・三浦光雄と再び組み、端正な構図により叙情性が際立つ。荒廃した世相に甘美なメロドラマが歓迎されヒットするとともに、キネマ旬報ベストテン3位および毎日映画コンクール日本映画大賞受賞の高評価を受けた。
13面影(96分・16mm・白黒)
- 2021年10月24日(日) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月10日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
恩師(菅井)の家に招かれた川崎(龍崎)は、恩師の若妻(濱田)が亡き愛妻に生き写しであるため動揺するが…。ブルジョワ家庭を舞台とした三角関係を題材に、抑制を効かせて心理劇を演出し、美しい海辺を背景に理性と感情の葛藤を冷徹に描く。若くして妻を亡くした経験を持つ五所の原案をもとに、『新雪』でも組んだ館岡謙之助が脚本を執筆した。
14わかれ雲(96分・35mm・白黒)
- 2021年10月27日(水) 6:10 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月23日(火) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
東宝争議後に契約打ち切りとなった五所は独立プロとしてスタヂオ・エイト・プロを立ち上げ再起した。その第1作は、自らの娘の境遇をモデルにして、旅先の小淵沢で病に臥せった女子大生(沢村)が人々の善意に触れて心身ともに回復するという抒情的ドラマ。低予算のためオール・ロケーションで撮影し、八ヶ岳周辺の風景をとりこんだ。親切な旅館の女中役で川崎弘子が好演。
15煙突の見える場所(108分・35mm・白黒)
- 2021年10月23日(土) 12:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月16日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
庶民生活に根差した人間喜劇を描きたいと意気込み、実存主義の作家・椎名麟三の「無邪気な人々」を土台に思想性とユーモアを調和させた戦後の代表作の一篇。北千住の“お化け煙突”が見える下町に暮らす中年夫婦(田中、上原)が捨て子を預かり、下宿人の若い男女(高峰、芥川)も巻き込んで騒動となる。本作を皮切りに椎名との協働を深めるとともに、音楽の芥川也寸志とのコンビが続く。ベルリン国際映画祭でも高く評価された。
16大阪の宿(122分・35mm・白黒)
- 2021年10月23日(土) 5:50 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年10月27日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
新東宝創立7周年記念企画にあたり、抒情的風俗劇を得意とする五所が本領を発揮。重役を殴って大阪に左遷された会社員(佐野)は、下宿先の安旅館で様々な境遇の女たちの身の上話を聞くが…。大正期に書かれた水上瀧太郎の同名小説を脚色し1954年当時を舞台として、世知辛い浮世の哀歓を温かく綴る。松竹で名コンビだった小原譲治と再び組み、細やかなショットを積み重ねた演出が冴える。
17愛と死の谷間(117分・35mm・白黒)
- 2021年10月31日(日) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月5日(金) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月16日(火) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
製作再開した日活に招かれた五所は、撮りたい企画に相応の予算をかけて取り組める機会に際し、『煙突の見える場所』では原作として取り上げた椎名麟三に書下ろし脚本の執筆を依頼。米国の水爆実験などによる社会不安を背景に、ヒューマニズムを理想としながらも不条理な現実に揺れ動く女医(津島)と彼女を尾行する探偵(芥川)の愛と葛藤を描く。前半での象徴的キャラクターたちを配した通俗劇的展開に加え後半のサスペンス描写を融合させた異色作。
18或る夜ふたたび(99分・16mm・白黒)
- 2021年11月5日(金) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月20日(土) 12:30 PM@長瀬記念ホール OZU
夫(佐野)の失業により旅館に住み込みで働きに出た妻(乙羽)が失踪し、夫は妻の行方を探すが…。本作から五所作品の脚本家として長谷部慶治が登場。椎名麟三の短篇「妻の失踪」を下敷きにアレンジし、『煙突の見える場所』で扱ったモチーフをさらに追求して夫婦相互の孤独感に焦点を当てた。松竹会長・大谷竹次郎が設立した歌舞伎座プロダクションの第1作で、五所は本作から1959年にかけての3年間で6本を撮り、同プロの主力を担った。
19黄色いからす(103分・35mm・カラー・英語字幕付 with English subtitles)
- 2021年10月29日(金) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月14日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
自作初めてのカラー映画にあたり色彩が意味を持つようにしたいと考えた五所は、児童色彩心理学に着想を得てオリジナル脚本で取り組んだ。復員してきた父親(伊藤)とうまく馴染めない息子(設樂)の描いた絵を通して、戦後の家族像を浮かび上がらせた名篇。自身も微妙な親子関係の幼少期を過ごしたことから子どもの深層心理に共感をもって演出したと語っている。
21螢火(123分・35mm・白黒)
- 2021年10月28日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月14日(日) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
坂本龍馬らの定宿として知られる寺田屋の女将・登勢の半生を描いた織田作之助の「蛍」の映画化。広大なオープンセットを組んで幕末の趣を再現した、五所にとって初めてかつ唯一の時代劇である。道楽に明け暮れる夫(伴)と空虚な生活を送っていた登勢(淡島)は、寺田屋に逃げ込んだ龍馬(森)を匿うことになり、高い志を持つ彼に心惹かれていく。
20挽歌(116分・35mm・白黒)
- 2021年10月31日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月18日(木) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
原田康子のベストセラー小説の映画化。配給の松竹が“第二、第三の挽歌”の製作を表明するほど大ヒットを記録した。アマチュア劇団で働く怜子(久我)は、中年の建築技師・桂木(森)に惹かれる一方、彼の美しい妻(高峰)にも同性愛的な慕情を抱く。五所は、怜子の「燃えたぎる夢と生命」に日本映画の新しい女性像を見出し、愛への渇望と空虚感が交錯する怜子の心情を繊細に描き出す。
22欲(106分・16mm・白黒)
- 2021年10月28日(木) 6:10 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月13日(土) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
原作は尾崎士郎の『ホーデン侍従』。人類のため不老不死の薬の研究に打ち込む折山(伴)。そんな本人の意志とは裏腹に儲け話に一口乗ろうとする金の亡者たちが集まり、珍妙な騒動が起こる。五所が「神話的」雰囲気漂う島根県を舞台に「人間本来の生命力を謳歌し、人間のもつおかしさ、はかなさ、みにくさ」を描き出したかったと語る異色コメディ。
23蟻の街のマリア(109分・35mm・カラー)
- 2021年10月29日(金) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月13日(土) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
浅草言問橋たもとのバタヤ部落“蟻の街”。その住人であった松居桃楼の原作をもとに、裕福な家庭に育ちながら自ら蟻の街に移り住み、献身的な活動を行ったカトリック信徒・北原怜子(千之)の半生を描く。本作で「純粋さへのあこがれ」を浮かび上がらせたかったと語る五所は、怜子が蟻の街に起こす奇跡を鮮やかな色彩で表現する。サン・セバスチャン国際映画祭国際カトリック・フィルム・オフィス賞受賞。
24わが愛(97分・35mm・カラー)
- 2021年11月2日(火) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月20日(土) 3:10 PM@長瀬記念ホール OZU
鳥取の山奥を舞台にした井上靖の短篇「通夜の客」の映画化。元新聞記者の新津(佐分利)が急死し、その通夜に遺族も友人もその名を知らない一人の女性・きよ(有馬)が焼香にあらわれる。五所はロケ地・信州の美しい自然によって、無償の愛を捧げるきよの孤独と不安をきめ細かく描き出す。本作の好評により松竹は五所と年間2本の契約を結び、井上原作の『白い牙』、『猟銃』を“愛の3部作”として売り出すことになる。
25白い牙(103分・35mm・カラー)
- 2021年11月3日(水) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月18日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
沙夷子(牧)は、夫婦関係が破綻した両親(佐分利、轟)への憎しみを抱き、その抵抗として真実の愛を求めるも、彼女自身も妻のいる角田(南原)に惹かれていく。再び井上原作に取り組んだ五所は、林と池の幽玄な風景を背景に中産階級の愛欲と背信を艶やかな映像表現で描き、松竹の外部にいながら松竹のメロドラマ路線を担う監督として不動の地位を得る。ニュープリントによる上映。
26猟銃(98分・35mm・カラー)
- 2021年11月3日(水) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月19日(金) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
五所による井上靖原作の文芸メロドラマ3作目。五所は「愛することも愛されることもできない人間の孤独な心理」を描こうとし、大ヒットを記録した。二組の夫婦間に巻き起こる愛と裏切りを、調度品に囲まれたセットと芥川也寸志の劇的な音楽を通じて描く。同時期のヴィンセント・ミネリらのハリウッドのメロドラマ映画とも比べて見られるべき作品。ニュープリントによる上映。
27雲がちぎれる時(94分・35mm・カラー)
- 2021年11月4日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月20日(土) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
高知の急峻な峠を通るバスの運転手・三崎(佐田)には、忘れられない女性(有馬)がいた。ある日、バスの乗客に大阪から戻ってきた彼女を見かける。年月を経てもなお強まる彼女への愛と執着が、フラッシュバックを通じて語られる。五所は次第に自暴自棄になっていく三崎の陰惨な姿を克明に描いている。ニュープリントによる上映。
28かあちゃん結婚しろよ(99分・16mm・白黒)
- 2021年10月30日(土) 12:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月12日(金) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
NHKでラジオドラマ化もされた檀一雄の小説を映画化。新潟の漁村で呑み屋を開きながら、女手一つで息子(謝)を育てるみつよ(新珠)は、漁師の武(田村)から求婚される。だが別れたはずの夫(伴)が突然現れ…。簡単には断ち切れない人と人のつながりが丹念に掘り下げられ、独特の息苦しさに満ちた五所演出が印象的な作品。
29100万人の娘たち(96分・35mm・カラー)
- 2021年11月4日(木) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月21日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
宮崎の観光業者の全面協力のもと、観光バスガイドとして働く女性たちの人間関係や恋愛模様を描いた作品。宮崎における観光業の発展に感銘を受けた松竹の大谷竹次郎会長の発案により始まった企画で、五所は脚本の久板栄二郎とともに各所をまわって内容を固め、当時“新婚旅行のメッカ”と呼ばれた宮崎の魅力をあますところなくフィルムに収めている。ニュープリントによる上映。
30恐山の女(98分・35mm・白黒)
- 2021年10月30日(土) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月19日(金) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
戦中期、青森県大湊の遊郭に身売りされた娘(吉村)が、偶然にも親子(殿山、寺田)と別々に相手をしたことから、不吉な女として忌み嫌われる。当時観光ブームが起きていた恐山をモチーフに、因習や迷信に抗おうとする女性を描いた作品で、五所から主役を指名された吉村実子の気迫に満ちた演技が光る。
31かあちゃんと11人の子ども(106分・16mm・カラー)
- 2021年10月30日(土) 3:10 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月17日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
実話の映画化で、伊豆の農村で11人の子どもを育てながらたくましく生きる母親(左幸子)の半生を描く。超人的な献身と奮闘によって家族の難事を笑顔とともに切り抜けていく母親像は、五所が手がけてきたホームドラマの中でも例外的な存在である。
32女と味噌汁(97分・35mm・カラー)
- 2021年11月9日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月21日(日) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
TBS「日曜劇場」の枠で放映された平岩弓枝原作の人気TVドラマの映画化で、TVと同じく池内淳子が主演している。芸者をしながらライトバンで味噌汁を売る店を始めた女性(池内)と彼女を取り巻く人々の人生模様を描く。五所はTVドラマの映画化には消極的だったが、「(東宝系の)東京映画が門を開けてくれたんだから、これは入るべきだ」との思いから監督を引き受けたという。
33糸あやつり 人形劇映画 明治はるあき 他(計105分)
- 2021年11月2日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2021年11月17日(水) 6:00 PM@長瀬記念ホール OZU
糸あやつり 人形劇映画 明治はるあき(73分・35mm・カラー)
愛知県犬山市の博物館明治村による明治100周年記念事業の一環として製作された人形劇映画。物語は、明治村を訪れた太郎爺さんが自身の少年時代を回想する形で進行し、鹿鳴館や鳶職人の梯子乗りといった明治の情景とともに、近隣に住む少女との切ない別れが綴られる。竹田人形座が精妙に繰る人形たちが、心を配ったカット割りや繊細なキャメラワークによってとらえられ、名状しがたい抒情を立ち上らせていく。
わが街三島 1977年の証言(32分・16mm・カラー)
三島市民サロンの依頼によって製作されたドキュメンタリーで、五所の遺作となった。湧水とともにあった三島の歴史と水質汚染の問題に焦点を当て、現地にて環境保全活動が活発化するきっかけを作った。三島で後半生を過ごした五所自身も出演しており、子どもたちに優しく語りかける姿が印象に残る。
*上映プリントは甚だしく褪色しています。予めご了承ください。
■前売指定席券のみ発売します。館内でのチケット販売・発券はありません。
■各回の開映後の入場はできません。
■前売指定席券の最新の完売情報は、チケットぴあのページをご覧ください。当館HPは情報の更新にタイムラグがございます。
2021年10月19日(火)
11:00 AM 開館
2021年10月20日(水)
11:00 AM 開館
2021年10月21日(木)
11:00 AM 開館
2021年10月22日(金)
11:00 AM 開館
2021年10月23日(土)
11:00 AM 開館
2021年10月24日(日)
11:00 AM 開館
2021年10月26日(火)
11:00 AM 開館
2021年10月27日(水)
11:00 AM 開館
2021年10月28日(木)
11:00 AM 開館
2021年10月29日(金)
11:00 AM 開館
2021年10月30日(土)
11:00 AM 開館
2021年10月31日(日)
11:00 AM 開館
2021年11月2日(火)
11:00 AM 開館
2021年11月3日(水)
11:00 AM 開館
2021年11月4日(木)
11:00 AM 開館
2021年11月5日(金)
11:00 AM 開館
2021年11月6日(土)
11:00 AM 開館
2021年11月7日(日)
11:00 AM 開館
2021年11月9日(火)
11:00 AM 開館
2021年11月10日(水)
11:00 AM 開館
2021年11月11日(木)
11:00 AM 開館
2021年11月12日(金)
11:00 AM 開館
2021年11月13日(土)
11:00 AM 開館
2021年11月14日(日)
11:00 AM 開館
2021年11月16日(火)
11:00 AM 開館
2021年11月17日(水)
11:00 AM 開館
2021年11月18日(木)
11:00 AM 開館
2021年11月19日(金)
11:00 AM 開館
2021年11月20日(土)
11:00 AM 開館
2021年11月21日(日)
11:00 AM 開館
2021年11月23日(火)
11:00 AM 開館
前売指定席券
10月12日(火)以降、毎週火曜日10:00amより、チケットぴあにて翌週(火~日)上映回の前売指定席券(310席・全席指定席)を販売します。※10/1(金)更新
[Pコード:551-546]
館内でのチケット販売・発券はありません。
障害者(付添者は原則1名まで)・国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズの方も前売指定席券をお求めください。
前売料金 *別途手数料がかかります。
一般:520円/高校・大学生・65歳以上:310円/小・中学生:100円
/障害者(付添者は原則1名まで)・キャンパスメンバーズ・優待:無料(*別途手数料がかかります)
・優待の方は「障害者または付添者等」券をお求めください。
・料金区分の違う前売指定席券では入場できません。差額のお支払いで観覧することはできません。
・学生、65歳以上、障害者、キャンパスメンバーズ、優待の方は証明できるものをご提示ください。ご提示のない方は入場できません。
・原則払い戻しはいたしません。ただし、感染症の状況に応じて変更することがございます。その場合は、HPにて発表いたします。
下記に該当する方は購入をお控え願います。
新型コロナウイルス感染症について
・陽性判定、あるいは医師に自宅待機指示を受けている方
・検査結果待ち、あるいは体調不良の諸症状がある方
・ご自身の身近に感染の疑いがある方
・過去14日間以内に、陽性の方と濃厚接触がある方、感染が拡大している国・地域への訪問歴がある方
前売指定席券の購入方法
セブン-イレブン(店頭のマルチコピー機)で購入
各回の上映1時間前まで
受付電話(0570-02-9999)で購入
各回の4日前11:59pmまで
チケットぴあのサイトで購入(https://w.pia.jp/t/nfaj-gosho/)
購入時期によってご利用可能な決済方法が異なります。上映当日はクレジットカードまたはちょコム決済で各回の上映1時間前まで購入可能です。
決済方法によって1件につき決済手数料がかかる場合があります。
購入方法別の手数料一覧はこちらをご覧ください。
・前売料金に加え、1枚につき発券手数料110円がかかります。
・必ず紙のチケットを発券してからご来館ください。
・購入サイトは準備でき次第アップされますが、ご利用は10月12日(火)10:00amからです。
・受付電話およびチケットぴあのサイトは毎週火・水2:30am ~ 5:30amはシステムメンテナンスのため受付休止となります。
・セブン-イレブンおよび受付電話での購入では座席選択ができません。全体的に散らばるよう自動で割り振られます。
・手数料等の詳細や購入方法に関する最新情報については、チケットぴあのサイトhttps://t.pia.jp/をご覧ください。
・本前売指定席券購入に、システム利用料はかかりません。
入場方法
・前売指定席券は来館前に必ず発券をお願いします。
・開場は開映30分前です。
・各回の開映後の入場はできません。
マスク着用のない方の入館をお断りします。
当館の新型コロナウイルス感染症拡大防止策
・来館者全員への検温を実施。
・館内各所に手指用消毒液を設置。
・清掃・消毒を強化。
・ホール内の換気を強化。
・スタッフはマスク・手袋等を着用して対応。
・受付などの対面場所に飛沫ガードを設置。
ご来館の皆様へのお願い
・発熱や風邪などの症状がある方は、来館をお控えください。
・咳エチケットにご協力ください。
・館内で体調を崩された場合は、スタッフにお知らせください。
・こまめな手洗いや手指の消毒にご協力ください。
・入退場やご観覧の際は、互いに適切な距離を保つようお願いいたします。
・ロビー等での飲食は、蓋の閉まる飲み物以外は禁止にさせていただきます。
・感染発生時の入館者追跡のため、ご自身で入館日時の記録をお願いいたします。
上映以外に関する当館の対策およびお願いにつきましては、こちらをご覧ください。