僕の友だち見つけたよ。心があれば、言葉はいらないはずだったのに…
すぐそばを川が流れる公園で暮らす少年。彼はある時、傍らに置かれた小石の存在に気づく。小石と共に、公園と川との間の狭い空間を転々と行き来する少年。しかし、ある時小石は忽然と消えてしまう。一切のセリフを排し、たったひとりの登場人物と彼の所持する石との不思議な関係を描く。
登場人物の背景もわからぬまま、観客は彼と彼の手に握られた小石とを、そして彼の周りに広がる光景をただ見つめることになる。蹴り上げられたサッカーボールが川の向こう岸に落下する時、寄りかかった木の大きさが引きの画で示される時、ありふれたなんということのない光景が目の前でその空間としての豊かさを押し広げられて行く。最小限の要素を用い、そこから普遍性と壮大さを引き出す本作には、紛れもない才能が宿っている。 文:結城秀勇(ライター・映写技師)