生徒が生徒を、先生が先生を演じる。自らが自らに扮することで見えてくる自分の姿
物語は夏休みの前日。とある中学校の教室で、「修学旅行の予定表」が破き捨てられるという小さな事件が起こる。一体誰が…?しかし、これをきっかけにクラスメイトの心が繋がり、大きな輪となる。
初めて観たのに、どうしてこんなに親しみ深いのだろうと思った。空気の合う人との出会いのような映画だ。それが嬉しかった。この作品では12歳~14歳の生徒がそのまま生徒役を、同じく教師が教師役を演じているわけだが、その演技は奇抜さや小賢しさとは一切無縁。とにかく、とてつもなく素直で素朴、言葉は人肌のように温かくて、微笑みのように柔らかい。健康な血の通った感覚がある。わたしはきっとそのことに一番心を揺さぶられたのだ。彼ら彼女らの経験した夏の1日は、永遠のように切なく、輝かしい。本物の若さに「二度」はない。 文:森下くるみ(文筆家・女優)