戦前の松竹でメロドラマ作家として一時代を築いた野村浩将監督による、吉屋信子の同名小説の映画化。若き考古学者の伊狩滋(佐分利)は、幼馴染の瑠璃子(桑野)と恋仲だったが、彼女の実家は資産家との縁談が持ち上がった瑠璃子を滋から引き離そうとする。滋はそれが許せず、彼を見初めた伊豆の温泉旅館の一人娘・寿美(田中)の婿になる。温泉旅館まで金の無心に来た滋の兄・猛(河村)の件をきっかけに、滋と寿美の夫婦関係は破綻する。その後、寿美とその家族には次々に不幸が降りかかる。こうしたメロドラマ大作を経て、翌年に大ヒットシリーズ『愛染かつら』(1938-39)が生まれる。