NFAJ Digital Gallery – No.16
公開日:2018年3月6日
第16回 無声期日本映画のスチル写真(6)─帝国キネマ①
「無声期日本映画のスチル写真」第6回は、帝国キネマを取り上げます。今回は特に、日活で巨匠となる以前の伊藤大輔の作品に焦点を当てます。写真は、みそのコレクション、国会図書館旧蔵資料から選定したものです。大監督の現存しないフィルムの一端をご堪能ください。
※解説・あらすじは文献に基づく。
『酒中日記』(1924年) Shuchu nikki
写真/Photo
1924年5月1日公開 浅草 遊楽館 First release: May 1, 1924
監督:伊藤大輔 Director: Daisuke Ito
伊藤大輔の監督デビュー作で国木田独歩の小説の映画化。東京で小学校の校長をしていた大河今蔵(松本泰輔)は、校舎の改築工事のために預かっていた寄付金を自堕落な実母(岸辺富江)に奪われる。困り果てた今蔵は泥酔している男の鞄から大金を盗み、工事費にあてる。今蔵の罪を詫びるため妻は自殺する。今蔵は失意のあまり海へ身を投げるが、死にきれずに孤島へ漂着する。今蔵は自殺に至った顛末を「酒中日記」に綴り、再び海に身を投げる。
『坩堝の中に』(1924年) Rutsubo no Nakani
写真/Photo
1924年7月25日公開 大阪 芦辺劇場 First release: Jul. 25, 1924
監督:伊藤大輔 Director: Daisuke Ito
併映作品:『寮の根岸』(1924年、帝国キネマ、監督:中川紫朗)、『倫敦の秘密 第二回 (シバ神の呼び声/奇蹟)』(1923年、イギリス、監督:A・E・コールビー)
Released with: Ryo no negishi (1924, Teikoku Kinema, dir. Shiro Nakagawa), The Call of Siva (1923, UK, dir. A.E. Coleby) and The Miracle, (1923, UK, dir. A.E. Coleby)
港町を舞台にした活劇。ホテル経営者の赤松尚蔵(高堂国典)の娘・春子(瀬川つる子)が、ホテルの客で領事館につとめる中国人の青年・揚庸(松本泰輔)と恋に落ちる。しかし、ホテル地下に秘密の阿片窟があることを知った赤松の使用人 “南京の玄”(浜田格)は、その弱みにつけこみ、春子を我が物にせんと企て、揚は恋人を守るため玄に戦いを挑む。
『血で血を洗ふ』(1924年) Chi de Chi o Arau
写真/Photo
1924年8月29日公開 浅草 遊楽館 First release: Aug. 29, 1924
監督:伊藤大輔 Director: Daisuke Ito
併映作品:『潮田主水』(1924年、帝国キネマ、監督:広瀬五郎)
Released with: Ushioda mondo (1924, Teikoku Kinema, dir. Goro Hirose)
貨物船の水夫・庄一(瀬川銀潮)は、強欲な船長・大堂(松本泰輔)に恋人・お蝶(小池春枝)を奪われたうえに船を追われる。お蝶は海に身を投げて死ぬ。さらに大堂は庄一の妹・お玉(柳まさ子)も奪うが、お玉の純真さに心を打たれる。お玉は大堂の子を産んだ後、病死する。復讐を誓った庄一は大堂を死にもの狂いで探し出し、彼の船に火を放つ。大堂は我が子を救うため火の中に飛び込み、庄一は大堂の改心を知る。
『星は乱れ飛ぶ』(1924年) Hoshi wa Midaretobu
写真/Photo
1924年9月28日公開 大阪 芦辺劇場 First release: Sept. 28, 1924
監督:伊藤大輔 Director: Daisuke Ito
「主婦の友」連載小説の映画化。アメリカを放浪する社会主義者の小金井明(高堂国典)の娘で舞踊家のみどり(澤蘭子)は、天才ヴァイオリニストの富井初雄(松本泰輔)と恋に落ち、帰国したばかりの父に結婚を請うが反対され、駆け落ちする。しかし父に逆らえないみどりは、生まれた子供を残して富井のもとを去る。12年後の大舞踏会において、みどりは全身全霊で舞踊「星は乱れ飛ぶ」を舞い拍手喝采を浴びるが、客席に愛児と夫の姿があるのを見て卒倒し、そのまま絶命してしまう。
併映作品:『猫』(1924年、帝国キネマ、監督:長尾史録)
Released with: Neko (1924, Teikoku Kinema, dir. Shiroku Nagao)